【解説】決算書類の作成・提出スケジュール
―公益法人・一般法人ごとに一覧表で解説―(期間限定公開)

和田一夫
(わだ・かずお 公認会計士・税理士)

Ⅰ はじめに

 公益法人・一般法人(移行法人=公益目的支出計画を実施中の法人)の決算業務のそれぞれの場面で、作成・提出しなければならな い「書類」は何か。  

 各法人の事務局長は、法令等で作成しなければならない書類を把握し、さらに法令等に定められたスケジュールを遵守しながら決算 業務を遂行しなければならない。  

 まず、各法人が作成すべき計算書類等を 「作成すべき計算書類等」の解説に基づき判断し、その上で作成不要な書類を省いて「決 算スケジュール表」に基づき計算書類等を作成・提出することになる。ただし、法令等で作成不要でも、法人が定款等に定めるなど任 意で作成・提出することは特に問題ない。  

 なお、決算スケジュール表は、定款において会計監査人非設置、理事会設置、監事設置、 3月決算の法人を想定している。

 

Ⅱ 計算書類等の作成(公益法人)

1 貸借対照表内訳表

 公益法人が作成すべき計算書類等は、【図表1】のとおりである。なかでも、収益事業等から生じた収益のうち50%を超えて公益目的事業財産に繰り入れる法人は、貸借対照表内訳表を作成しなければならない(50%繰入れ法人は作成不要)。  

 なお、収益事業等から生じた収益のうち 50%を超えて公益目的事業財産に繰り入れるか、50%を繰り入れるかは毎年選択することができる。しかし、一旦50%超を繰り入れた場合は、法人の選択によりその後の繰入れが 50%に留まった場合でも、表示の継続性から内訳表の作成を維持することが適当である (注 1 )。

 

【図表 1 :公益法人が作成すべき計算書類等】

2 キャッシュ・フロー計算書

 キャッシュ・フロー計算書については、認定法 5 条12号の規定により、会計監査人を設置すべき公益法人以外の公益法人は、これを 作成しなくてもよい(公益法人会計基準に関る運用指針 3 )。  

 キャッシュ・フロー計算書を作成しなくてもよい公益法人は、次の①〜③それぞれに該当しない法人である(公益法人会計基準に関する実務指針 Q57)。

【キャッシュ・フロー計算書の作成が不要となる法人】

① 直近の最終事業年度に係る正味財産増減計算書の収益の部に計上した額の合計が1,000億円以上の法人
② 直近の最終事業年度に係る正味財産増減計算書の費用の部に計上した額の合計が1,000億円以上の法人
③ 直近の最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計が50億円以上の法人

Ⅲ 決算スケジュール(公益法人)

1  監事監査の実施

 公益法人の決算スケジュールは【図表 2 】 のとおりである。まず監事監査について、監事が計算書類等を受領した後、監査報告の通知期限が定められているが(法人法施行規則 37条 1 項、認定法施行規則33条 2 項)、一般的には理事会招集に間に合うように監事は監事監査を実施し、監事監査実施日付で監査報告書を提出している。

 

【図表 2 :公益法人の決算スケジュール】

▶決算日(2024年 3 月31日)

 

2  理事会の招集・開催

 理事会を招集する者は、理事会の日の 1 週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、各理事及び各監事に対してその通知を発しなければならない。その際、提供しなければならない書類は、以下のとおりである。

▶貸借対照表
▶貸借対照表内訳表
▶正味財産増減計算書
▶正味財産増減計算書内訳表
▶財務諸表に対する注記
▶計算書類の附属明細書
▶財産目録
▶キャッシュ・フロー計算書
▶事業報告及びその附属明細書

 理事会では、これらの書類について承認を得なければならない。また、理事会の議事録は理事会の日から10年間、主たる事務所に備え置かなければならない。

 

3 評議員会(社員総会)の招集・開催

 定時評議員会(定時社員総会)の開催にあたり、まず評議員会(社員総会)の日の 2 週間前の日から計算書類等(貸借対照表、正味財産増減計算書、計算書類の附属明細書、事業報告及びその附属明細書、監事監査報告) を主たる事務所に 5 年間、その写しを従たる事務所に 3 年間、備え置かなければならない。  

 評議員会(社員総会)の招集は、評議員会 (社員総会)の日の 1 週間前までに通知を発しなければならない。  

 ただし、社員総会の場合、出席しない社員が書面または電磁的方法によって議決権を行使することができることとするときは、社員総会の日の 2 週間前までに通知を発しなければならない。  

 その際、提供しなければならない書類は、 以下のとおりである。

 

【社員総会招集時に提供が必要な書類】

▶貸借対照表
▶貸借対照表内訳表
▶正味財産増減計算書
▶正味財産増減計算書内訳表
▶財務諸表に対する注記
▶財産目録
▶キャッシュ・フロー計算書
▶事業報告
▶監事監査報告

4 報告事項と承認事項

 定時評議員会(定時社員総会)では、事業報告は報告事項であるが、貸借対照表、貸借対照表内訳表、正味財産増減計算書、正味財産増減計算書内訳表、財務諸表に対する注記及び財産目録並びにキャッシュ・フロー計算書は承認事項である。  

 また、評議員会(社員総会)の議事録は、 評議員会(社員総会)の日から主たる事務所に10年間、その写しを従たる事務所に 5 年間、備え置かなければならない。

 

5 重要書類の作成・備置き・提出

 財産目録、役員等名簿、役員等の報酬等の支給の基準を記載した書類、キャッシュ・フ ロー計算書、運営組織及び事業活動の状況の概要及びこれらに関する数値のうち重要なものを記載した書類について、毎事業年度経過後 3 か月以内に主たる事務所に 5 年間、その 写しを従たる事務所に 3 年間備え置かなければならない。  

 なお、運営組織及び事業活動の状況の概要及びこれらに関する数値のうち重要なものを記載した書類については「事業報告に係る提 出書 Ⅲ- 3 別紙 1 」を参照。  

 事業報告等に係る提出書について、財産目録、役員等名簿、役員等の報酬等の支給の基準を記載した書類、社員名簿、法人法129条 1 項(199条) に 規定する計算書類等、キャッシュ・フロー計算書、運営組織及び事業活動の状況の概要及びこれらに関する数値のうち重要なものを記載した書類及び数値の計算の明細、行政庁が公益法人の事業の適正な運営を確保するために必要と認める書類、滞納処分に係る国税及び地方税の納税証明書 (「事業報告等に係る提出書」)は、毎事業年度経過後 3 か月以内に、行政庁に提出しなければならない。  

 具体的な記載及び添付書類については「定期提出書類の手引き 公益法人編(事業計画書、事業報告等を提出する場合)内閣府/都道府県」を参照。

 

6 決算スケジュールの留意点

 【図表 2 】の決算スケジュール表は、定款において、会計監査人を設置していない法人を想定したものとなる。会計監査人設置法人 では、法人法、法人法施行規則、認定法、認定法施行規則において別途定めがあるので、上記スケジュール等を逐次修正していただきたい。  

 また、定款において会計監査人を設置せずに公認会計士・監査法人に任意で会計監査を委嘱している場合は、上記スケジュールに変更はないが、監事監査までに公認会計士・監査法人の(会計監査を受け)監査報告書を受領していることが一般的である。

 

Ⅳ 計算書類等の作成(一般法人のうち移行法人)

1  貸借対照表及び同内訳表

 ここでいう移行法人とは、特例民法法人から一般法人へ移行した後、公益目的支出計画の実施が完了したことの確認を受けていない法人のことである。  

 一般法人のうち移行法人が作成する計算書類等は、【図表 3 】のとおりである。  

 貸借対照表について、貸借対照表に実施事業資産を注記する方法を採用すれば、貸借対照表内訳表は作成しなくてもよい。また、貸借対照表内訳表を作成すれば、貸借対照表に実施事業資産の注記は不要となる。  

 移行法人以外の一般法人は、整備法の定めによる書類を作成する必要はなく、貸借対照表にFAQにある実施事業資産の注記をする必要もない。

 

【図表 3 :一般法人のうち移行法人が作成する計算書類等】

 

Ⅴ 決算スケジュール(一般法人のうち移行法人)

1  監事監査の実施

 一般法人のうち移行法人の決算スケジュールは、【図表 4 】のとおりである。監事監査について、監事が計算書類等を受領した後、 監査報告の通知期限が定められているが(法人法施行規則37条 1 項、整備法施行規則43条 3 項)、一般的には理事会招集に間に合うように監事は監事監査を実施し、監事監査実施日付で監査報告書を提出している。

 

【図表 4 :一般法人のうち移行法人の決算スケジュール】

▶決算日(2024年 3 月31日)

2 理事会の招集・開催

 理事会を招集する者は、理事会の日の 1 週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、各理事及び 各監事に対してその通知を発しなければならない。その際、提供しなければならない書類は、以下のとおりである。

 

【理事会招集時に提供が必要な書類(移行法人)】

▶貸借対照表
▶貸借対照表内訳表
▶正味財産増減計算書
▶正味財産増減計算書内訳表
▶財務諸表に対する注記
▶計算書類の附属明細書
▶公益目的支出計画実施報告書
▶事業報告及びその附属明細書
▶監事監査報告

 理事会では、これらの計算書類等(監事監査報告を除く)について承認を得なければならない。また、理事会の議事録は理事会の日 から10年間、主たる事務所に備え置かなければならない。

 

3 評議員会(社員総会)の招集・開催

 定時評議員会(定時社員総会)の開催にあたり、評議員会(社員総会)の日の 2 週間前の日から計算書類等(貸借対照表、正味財産 増減計算書、計算書類の附属明細書、事業報告及びその附属明細書、監事監査報告、公益目的支出計画実施報告書)を主たる事務所に 5 年間、その写し(公益目的支出計画実施報告書を除く)を従たる事務所に 3 年間、備え置かなければならない。  

 評議員会(社員総会)の招集は、評議員会(社員総会)の日の 1 週間前までに通知を発しなければならない。ただし、社員総会の場合、出席しない社員が書面または電磁的方法によって議決権を行使することができることとするときは、社員総会の日の 2 週間前までに通知を発しなければならない。  

 その際、提供しなければならない書類は、 以下のとおりである。

 

【社員総会招集時に提供が必要な書類(移行法人)】

▶貸借対照表
▶貸借対照表内訳表
▶正味財産増減計算書
▶正味財産増減計算書内訳表
▶財務諸表に対する注記
▶公益目的支出計画実施報告書
▶事業報告
▶監事監査報告

 

4 報告事項と承認事項

 定時評議員会(定時社員総会)では、事業報告、公益目的支出計画実施報告書については報告事項であるが、貸借対照表、貸借対照表内訳表、正味財産増減計算書、正味財産増減計算書内訳表、財務諸表に対する注記は承認事項である。  

 公益目的支出計画実施報告書は、整備法 127条 2 項及び法人法126条 3 項により評議員 会(社員総会)の報告事項であるが、定款において承認事項としている移行法人は、評議員会(社員総会)で承認することになる。  

 また、評議員会(社員総会)の議事録は、 評議員会(社員総会)の日から主たる事務所に10年間、その写しを従たる事務所に 5 年間、備え置かなければならない。

 なお、移行法人は毎事業年度の経過後 3 か月以内に、計算書類等及び公益目的支出計画実施報告書を認可行政庁へ提出しなければならない。

 

5 決算スケジュールの留意点

 【図表 4 】の決算スケジュール表は、定款において会計監査人を設定していない法人を想定している。会計監査人設置法人では、法 人法、法人法施行規則において別途定めがあるので、上記スケジュール等を逐次修正していただきたい。  

 また、定款において会計監査人を設置せず に公認会計士・監査法人に任意で会計監査を委嘱している場合は、上記スケジュールに変 更はないが、監事監査までに公認会計士・監査法人の(会計監査を受け)監査報告書を受領していることが一般的である。

 

【注】

(注 1 )日本公認会計士協会「貸借対照表内訳表及び正味財産増減計算書内訳表の作成と会計処理について」(平成23年 5 月13日) Q12及び内閣府「定期提出書類の手引き公益法人編(事業計画書、事業報告等を提出 する場合)内閣府/都道府県」Ⅲ- 7  別紙 5 :その他の添付書類(注)⑤を参照
執筆者Profile
和田一夫(わだ・かずお) 東京都在住
公認会計士・税理士。日本公認会計士協会非営利法人委員会元副委員長、大手監査法人で公益法人の会計監査を経験後、独立開業。公益法人の会計監査、税務顧問、コンサルティングを多数務める。 全国公益法人協会相談員顧問。
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