組織図・業務分掌規程の作成・変更の仕方
2020年11月13日

渋谷幸夫
(しぶや・ゆきお 全国公益法人協会特別顧問)
(しぶや・ゆきお 全国公益法人協会特別顧問)
- CATEGORY
- 法人運営・組織図・業務分掌規程
- 対 象
- 公益法人・一般法人
目 次
- はじめに
- Ⅰ 組織体系の確立
- 1 国の行政組織に関する定め
- 2 普通地方公共団体の組織に関する定め
- 3 株式会社等の組織・権限等に関する定め
- 4 一般法人・公益法人における組織に関する定め
- Ⅱ 業務分掌規程
- 1 業務分掌規程の意義・作成
- 2 業務分掌規程の作成例
- 3 業務執行と職務執行の用語の区分
- Ⅲ 組織図・業務分掌規程の改正
- おわりに
はじめに
法人が定款に定める目的事業を適正に実施するためには、どのような組織体系に基づいて行うかにつき、関係規程等に位置付けられていることが肝要である。法人の事業規模については、年間2,000万円程度のものから、100億円を超えるような大規模なものも存在している。したがって、これに対応して整備されるべき関係規程等も、事業規模等に見合った体系のものとなるのは当然である。
本稿は、法人に求められている各種規程等のうち、法人組織の位置付けにつき主として検討するものであるが、必ずしも確立されたものが存在する訳ではない。
公益法人の場合、事業報告等に係る提出書類の中には、複数の事業又は複数の組織(施設や事業所等)がある場合に、その内容に変更があったときは、「事業・組織体系図」(後掲)を添付することが求められている。
また立入検査に際しては、「法人の組織及びガバナンスの状況」との関係で、「事業・組織体系図は実態と整合しているか否か」の観点から、これが検査対象項目に入っている。組織体系と実施事業の整合性が求められるのは、当然と言える。
一般社団法人等においても、定款に定める目的事業を適正に実施するためには、公益法人の場合と同様に組織体系の規程等の整備が求められる。
以下、これらの観点から法人の組織体系をどう規定化するか、業務分掌をどのような形式で定めるか等につき検討する。
Ⅰ 組織体系の確立
一般法人法に定める一般社団法人及び一般財団法人(以下「一般法人」という。)の設立に際しては、定款が定められ(法10条、152条)、法人に関する基本事項は、定款に記載される(法11条、153条)。一般法人がその設立目的を達成するためには、確立された組織の下に事業を実施することが必要であることはいうまでもない。
1 国の行政組織に関する定め
国の場合には、国家行政組織法にその目的( 1 条)及び組織の構成( 2 条)等につき、次のように記載されている。(目的)
第1 条 この法律は、内閣の統轄の下における行政機関で内閣府以外のもの(以下「国の行政機関」という。)の組織の基準を定め、もって国の行政事務の能率的な遂行のために必要な国家行政組織を整えることを目的とする。 (組織の構成)
第2 条 国家行政組織は、内閣統括の下に、内閣府の組織とともに、任務及びこれを達成するため必要となる明確な範囲の所掌事務を有する行政機関の全体によって、系統的に構成されなければならない。2 国の行政機関は、内閣の統轄の下に、その政策について、自ら評価し、企画及び立案を行い、並びに国の行政機関相互の調整を図るとともに、その相互の連絡を図り、すべて、一体として、行政機能を発揮するようにしなければならない。内閣府との政策についての調整及び連絡についても、同様とする。 (行政機関の設置、廃止、任務及び所掌事務)
第3 条 国の行政機関の組織は、この法律でこれを定めるものとする2 行政組織のため置かれる国の行政機関は、省、委員会及び庁とし、その設置及び廃止は、別に法律の定めるところによる。3 省は、内閣の統轄の下に第5 条第1 項の規定により各省大臣の分担管理する行政事務及び第2 項の規定により当該大臣が管理する行政事務をつかさどる機関として置かれるものとし、委員会及び庁は、省に、その外局として置かれるものとする。4 第2 項の国の行政機関として置かれるものは、別表第1 にこれを掲げる。第4 条 前条の国の行政機関の任務及びこれを達成するため必要となる所掌事務の範囲は、別に法律でこれを定める。
2 普通地方公共団体の組織に関する定め
一方、地方公共団体の場合には、地方自治法158条に普通地方公共団体の内部組織につき、次のように規定されている。(内部組織の設置・編成)
第158条 普通地方公共団体の長は、その権限に属する事務を分掌させるため、必要な内部組織を設けることができる。この場合において、当該普通地方公共団体の長の直近下位の内部組織の設置及びその分掌する事務については、条例で定めるものとする。2 普通地方公共団体の長は、前項の内部組織の構成に当たっては、当該普通地方公共団体の事務及び事業の運営が簡素かつ効率的なものとなるよう十分に配慮しなければならない。このほか、支庁・地方事務所・支所・出張所の設置に関しては155条に、また行政機関の設置、国の地方行政機関設置の条件については156条にそれぞれ規定が設けられている。
3 株式会社等の組織・権限等に関する定め
企業が効率的な事業活動を行うためには、法人の事業規模と人材の実態に合わせた最善の組織化が求められる。したがって、組織・役員職務権限規程等を整備し、円滑なる運営が望まれる。なお、「組織」とは、一定の目的を達成するために意識的に総括された複数の人間の活動ないし諸力の体系であると一般に定義されている。したがって、当該法人の事業規模の大小に関係なく、すべての法人は協働し、秩序だったシステムの組織が必要となる。
4 一般法人・公益法人における組織に関する定め
新しい法人制度への移行後においても、当該法人の事務を処理するため、定款に事務局制度を設けている法人が多い。旧法人制度の下においては、指導監督基準( 4 機関( 5 )事務局及び職員)において、「当該法人の事務を処理するため、事業の規模、内容等を考慮して事務局を設置し、所要の職員(可能な限り常勤職員)を置くこと。」と定められていたため、半ば強制的に定款(寄附行為)に事務局制度が設けさせられた。現在の定款に定められている事務局制度に関する規定としては、次のようなものが一般的である。
(設置等)
第〇条 この法人の事務を処理するため、事務局を設置する。
2 事務局には、事務局長及び所要の職員を置く。
3 事務局長、部長等の重要な職員は、代表理事が理事会の承認を得て任命する。
4 前項以外の職員は、代表理事が任命する。
5 事務局の組織及び運営に関する必要な事項は、代表理事が理事会の決議により別に定める。
⑴ 組織規程の整備
国の行政機関の組織の基準は国家行政組織法により定められ、普通地方公共団体の内部組織等については条例によって定められるのと同様に、株式会社、一般法人・公益法人(以下、「一般法人等」とする。)においては規程(規則)において組織に関する基本的事項が定められる。
しかしながら、一般法人等にあっては株式会社の場合と異なり事業規模の大きい法人はそんなに多くはないので、組織に関する事項を単独に組織規程として設けている例は極めて少ない。法人事務局制度を設けている法人の場合には、当該事務局規程において事務局組織、職務分掌、職務権限等を規定化している例が多いようである。
単独に組織規程を設ける場合の規定形式としては、次のようなものになると考えられる。
組織規程例(Wordファイルのダウンロードはこちら)
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