非営利型法人が特別の利益供与をした場合の課税の脅威
2020年10月14日

苅米 裕
(かりごめ・ゆたか 税理士)
(かりごめ・ゆたか 税理士)
- CATEGORY
- 時事解説・裁決事例
- 対 象
- 公益法人・一般法人
目 次
- Ⅰ はじめに―特別の利益供与の認定―
- Ⅱ 特別の利益供与と累積所得金額の課税
- 1 非営利型法人における特別の利益の意義
- 2 公益認定の基準第3号及び第4号の特別の利益
- 3 累積所得金額の益金算入等
- Ⅲ 裁決事例の考察
- 1 本件裁決の事案の概要
- 2 審判所が認定した特別の利益供与
- ⑴ 本件家財等共済掛金の負担について
- ⑵ 本件敬老祝金の交付について
- ⑶ 本件利用券の利用に基づく負担について
- 【小括―審判所の判断について―】
- Ⅳ 総括―特別の利益供与の認定回避―
Ⅰ はじめに-特別の利益供与の認定-
公益法人(注1 )及び一般社団法人等(注2 )のうち非営利型法人は、法人税法において、公益法人等(法法2 ①六)に含まれ、税制優遇措置として表象される収益事業課税の対象としている(注3 )。これにより、一般社団法人等について、法人税の課税所得の範囲は、非営利型法人には収益事業課税を適用する一方で、非営利型法人以外の法人には全ての所得に対して法人税を課税することになる。そうすると、非営利型法人として存続することは、一般社団法人等の業務に与える影響から重大な課題となり、理事会等の機関運営において、法人税法に規定する要件の充足状況の入念な監視が求められることになる。とりわけ重要な要件として、「特定の個人又は団体に特別の利益を与えることを決定し、又は与えたことがないこと」(法令3 ①三、②六、以下「特別の利益供与」という。)を挙げることができる。この特別の利益供与とは、税法の規定にしばしばみられる不確定概念といえ、一般社団法人等の事業運営において、見逃しそうな行為等に潜むものであり、法令等の適合判断に窮するものである。
また、非営利型法人として収益事業課税の適用を受けている一般社団法人等は、特別の利益供与の認定を受けた場合、全ての所得に対して法人税が課税されることに転換する想定があるとしても、これまで税制優遇措置を受けてきた反動として、さらに重大な課税問題に派生することを意識しながら事業運営を行っているとは感じられない。
新公益法人制度がスタートして約10年、平成30年6 月8 日の日本経済新聞において、一般社団法人(以下「本件一般社団法人」という。)が非営利型法人の要件を欠落し「追徴税額は過少申告加算税を含め計約20億円に上るとみられる」(注4 )旨が
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