出捐金の取扱いと留意点
2020年07月10日

渋谷幸夫
(しぶや・ゆきお 全国公益法人協会特別顧問)
(しぶや・ゆきお 全国公益法人協会特別顧問)
- CATEGORY
- 法人運営・出捐金
- 対 象
- 公益法人・一般法人
目 次
- Ⅰ 出捐金とは何か
- 1 公益法人の設立と出捐金との関係
- 2 地方自治法上の出資と出捐金との関係
- Ⅱ 出捐者からの出捐金相当額の返還請求権の行使
- Ⅲ 出捐金の返還等に関する手続き
- 1 法人の解散に伴う残余財産の帰属先
- 2 出捐した地方公共団体からの出捐金相当額の返還請求権の行使
- 3 外郭団体からの地方公共団体に対する出捐金の一部返還手続
Ⅰ 出捐金とは何か
1 公益法人の設立と出捐金との関係
新しい法人制度に移行する前、すなわち改正前の民法の規定に基づき設立された公益法人(改正前民法34条の規定に基づき設立された社団法人・財団法人)について、特に地方公共団体において戦後増大する行政事務の処理に対応するため、法人の設立に必要とされる財産の一定額を出捐し、財団法人の設立に積極的に関与した経緯がある。いわゆる「行政委託(補完)型公益法人」の幕開けである(2005年頃)。そして、出捐金相当額は財団法人にあっては基本財産としてその運用益をもって当該法人の事業運営を行うことにするなど、出捐金の占める割合は重要なものと理解されてきた。そして、出捐金である基本財産の処分等については、主務官庁の承認を必要とするなど、厳格な管理の下に維持・管理された。
2 地方自治法上の出資と出捐金との関係
⑴ 出資による権利地方自治法において、「出資による権利(地方自治法238条1項7号)」は、普通地方公共団体の所有する財産で、公有財産(行政財産・普通財産)に属するものとされている(地方自治法238条1項、3項)。
この場合の「出資」とは、地方自治法199条7項、221条3項に規定する「出資」と同意義であり、株式会社、社団法人等に対する出資のほか、財団法人でいう寄附財産等の出捐をも含むとされている。
「出資」の意義については、一般には事業を営むための資金として、金銭その他の財産、信用若しくは労務を法人、組合等に出捐することであり、「出資による権利」はその出捐により法人等の財産に対し取得する持分その他の権利をいうと解されている。出資が金銭でなされる場合に、その金銭を「出資金」という。
⑵ 「出捐」の意味
出捐という言葉は、法律上いろいろなところで使用されている。例えば、平成16年12月1日法律第147号「民法の一部を改正する法律」に基づく民法典の現代語化により、民法442条1項、443条1項、2項において、「自己ノ出捐ヲ以テ」は「自己の財産をもって」に、また、本年4 月1 日の民法改正で消滅したが、改正前民法567条2項において「買主ガ出捐ヲ為シテ」、「売主ニ対シテ其出捐ノ償還ヲ請求スルコトヲ得」は、「買主は、費用を支出して」、「売主に対し、その費用の償還を請求することができる」と、それぞれ「出捐」が「財産」又は「費用」という用語に置き換えられている。
法律上の「出捐」の意味については、「当事者の一方がその意思に基づいて自己の財産を減少させ、それにより他人の財産を増加させること」と解されている。上記民法の規定からは、「出捐」は「財産」あるいは「費用」という意味にも解することになる。
⑶ 「出資による権利」の範囲と出捐金
地方自治法238条1項7号の「出資による権利」の範囲については、その立法趣旨等から考え、一般に広く解されている。
公益法人の設立に関係している地方公共団体からの出捐金の取扱いについては、本来「出資による権利」とは異なるが、実質的に同様である出捐金は、「出資による権利」に含まれるものと解されている(昭和38年12月19日自治丁行発第93号行政課長通知。注5参照)。
出捐を受けた公益法人等においては、出捐金相当額は基本財産として当該法人の財産に計上され、法人の設立目的に沿って管理運用されるべきものと取り扱われてきた。
しかしながら、出捐金は財産管理上の観点から「出資による権利」に含まれるとしたものであって、「出資」に対応して請求できる「権利」を認めたものではないと解される。そのため、現実に「持分権」あるいは「残余財産分与請求権」が具体化されることを前提とするものではないと解される。
しかし、一般的な権利として、地方公共団体が公益財団法人等の設立に際し出捐した場合には、法人運営上の発言権、あるいは当該財団法人の事業終了時における残余財産処分に係る発言権等を有するものと解されてきた。
Ⅱ 出捐者からの出捐金相当額の返還請求権の行使
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