其之二十九 財務報告の目的 ―公益法人会計検定試験編―

古市雄一朗
(ふるいち・ゆういちろう 大原大学院大学教授)

 

例題:公益法人の財務報告の目的の説明として正しいものを選びなさい。
① 公益法人は適切な経営判断を行うために財務報告を行い、効率的な経営判断に資することが財務報告の主な目的である。
② 公益法人の財務情報の主たる情報利用者は、その運営に責任を負っている法人の代表者である。
③ 公益法人の財務報告の主な目的は資源提供者を念頭に置いた情報を提供することである。
④ 公益法人の財務報告において、財産状態を明らかにするために貸借対照表を、資金の状況を明らかにするために活動計算書をそれぞれ作成する。
(令和6年公益法人会計基準をもとに筆者作成)
※公益法人会計検定試験では2025年度実施分は平成20年会計基準に準拠した問題となる。

 

資源提供者に対する情報提供

 例題では公益法人の財務報告の目的が問われているが、実際に問われているのは会計基準上この点がどのように定められているかという理解である。
 令和6年公益法人会計基準のⅠ-4においては、以下のように定められている。

(前略)非営利法人である公益法人における財務報告は、その活動基盤となる資源提供者を念頭に置いた情報(資源提供者の意思決定に有用な情報、資源の受託者としての説明責任を果たすための情報)を提供することが主要な目的となる。

 要するに公益法人の財務報告の主目的は資源提供者に対する情報提供であるということだが、この点が理解できていれば問題中の4つの選択肢の中から、正解を探すことができる。
 ①は財務報告の目的は経営判断に役立てる情報の作成にあるとしているが、そのような法人内部の経営者(運営者)に対する情報提供は主要な目的とされていないのでふさわしくないことが分かる。
 ②も①とほぼ同じ理由で誤った答えと言える。
 ③が正解であるが、この点は会計基準において記されている資源の提供者に情報を提供することが主要な目的であるという内容に合致している。
 ④は少しひっかけとなるが、貸借対照表が示すのは財産状態ではなく財政状態であるし、活動計算書は資金の状況ではなく活動状況を明らかにするために作成されるので④の記述は誤りとなる。もしこれが、「④公益法人の財務報告において、財政・・状態を明らかにするために貸借対照表を、活動状況・・・・を明らかにするために活動計算書をそれぞれ作成する。」となっていれば正解の選択肢となっていた。

 

体系的に学ぶために

 先号(2025年6月15日号)では、検定試験を通して公益法人の会計・簿記を学習することの意義について取り上げた。その最大のメリットは必要な知識を体系的に学べるという点にあるだろう。
 特に公益法人会計検定試験の場合、簿記の計算問題だけでなく理論問題に相当するような内容も含まれているので、より幅広い理解を得ることができる。現在の公益法人会計検定試験は、3級も2級もコンピューター上で回答を行う、いわゆるCBT方式により実施されているため、理論問題と言っても選択式で長々と記述を行う必要はない。暗記より、重要な基準の内容の理解が求められることになるだろう。この点を例題を用いて少し考えたい。
 問題の注にも示したが、公益法人会計検定試験では2025年度実施分は平成20年会計基準に準拠した問題となるため直近の公益法人会計検定試験では、今回触れた内容は範囲外となるが、理論問題の学習の仕方については基本的に同じである。
 検定試験の理論問題と聞くと暗記と結びつく人も多いかもしれないが、理解を意識した学習の積み重ねは法人運営において多くのメリットが期待できる。

 


古市雄一朗/大原大学院大学教授。専門は非営利組織会計。

 



 

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其之二十一 現金過不足金
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其之二十三 建設仮勘定
其之二十四 訂正仕訳
其之二十五 当座借越
其之二十六 電子記録債権
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