2026年4月改正公益信託法の施行に向けて
(おかもと・まさひろ 関西学院大学名誉教授
(社福)大阪ボランティア協会ボランタリズム研究所所長)
改正公益信託法の施行が、来年(2026年)4月に予定されている。公益法人や一般法人にとってどんな意味があるだろうか。
日本では投資信託や家族信託について聞いたことはあるとしても、信託自体にはなじみが薄い方が多いだろう。信託とは、単純に言えば、誰か(委託者)が、誰か(受益者)のため、あるいは何らかの目的のために、財産を信頼する誰か(受託者)に渡し、使ってもらう仕組みである。公益信託は、この目的が「皆のため」となる。英米法諸国では長い歴史があり、利用はとても深く広い。
日本で公益信託は、1922(大正11)年に制度化された。1977(昭和52)年に初めて利用されて以来、累計1,000億円を超える給付を行い、現在372件、信託財産残高520億円(本年3月末現在)の規模である。
昨年この制度が100年ぶりに抜本改正された。①主務官庁制の廃止と統一の行政庁・民間有識者委員会による監督への移行、②受託者を事実上の信託銀行限定から個人や一般の法人等へ拡大、③信託事務を事実上の助成限定から多様な公益事業に拡大、④税制優遇を限定から公益信託認可と基本的に連動、⑤信託財産を事実上金銭限定から有価証券や不動産、知財まであらゆる財産に拡大等、大転換である。非営利公益活動の、特活法人制度、公益法人制度と並ぶ第3のツールとしての可能性が拓かれた。財産拠出という点では、寄付や財団法人形成と並ぶ公益目的資産の受け皿が使いやすくなったと言える。
公益法人、一般法人は使えるだろうか。委託者・受託者・信託管理人(受益者に代わり受託者を監督)という公益信託の3つのアクターのどれになるかという選択を含め、多様な利用が構想できる。一般法人には、受託者として財産の税制優遇受入手段として重要だ。公益法人にとっては、受託者になるより寄付を受けた方が簡単なのは当然で、発想が貧困だと利用できない。しかし、例えば、信託の倒産隔離機能(受託者が倒産しても信託財産は守られる)の強調や委託者の助言を認める信託契約により財産拠出インセンティブを拡大して大きな財産を受託したり、また委託者として現場を知る受託者への信託による多年度助成のツールとしたり、など可能性は広い。要は道具を使う構想力次第である。
来年4月の施行に向けガイドラインも今年中にも策定される。制度が固まれば公益・一般法人がどう使うか知恵が試される。まず、新しい制度を学び、関連ステークホルダーのネットワークを作っていくことが重要だろう。
関西学院大学名誉教授・(社福)大阪ボランティア協会ボランタリズム研究所所長
内閣府「新たな公益信託制度の施行準備に関する研究会」参与、(一社)公益信託推進イニシャチブ代表理事、(公財)公益法人協会顧問・「新しい公益信託の活用に向けた研究会」世話人、「関西改正公益信託法施行準備研究会」呼びかけ人、(公財)助成財団センター評議員、元日本NPO学会会長・元大阪府公益認定等委員会委員長等。
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