「基本財産」のあり方を考える
(おおの・けんたろう 弁護士)
一般財団法人・公益財団法人では、平成の公益法人制度改革以前の財団法人における整理を受け継いで、その定款に基本財産の定めを設ける例が多い。そのような法人においては、保有する財産を基本財産とそれ以外の財産とに分け、基本財産については、それ以外の財産よりも処分する財産の手続が加重されていることが多い。
他方、現行法令上、基本財産とそれ以外の財産とを区別する必要があるのは、公益目的事業を行うために不可欠な特定の財産(以下「不可欠特定財産」という。)を有する公益財団法人のみである。不可欠特定財産を有する公益財団法人においては、①不可欠特定財産を有する旨、②その維持及び処分の制限について必要な事項の2 点を定款に定めなければならず(認定法5 条19号)、その定款の定めは、基本財産としての定めも兼ねるとの運用であるため(公益認定等ガイドライン105頁)、基本財産とそれ以外の財産とが区別されることとなる。これに対し、一般財団法人や不可欠特定財産を有しない公益財団法人は、その保有する財産を、基本財産とそれ以外の財産とに区別しなければならない法令上の義務はない。ただし、一般財団法人や不可欠特定財産を有しない公益財団法人においても、定款に基本財産についての定めを設けることは可能であり、そのような定めを設けた場合には、当該法人の理事は、定款で定めるところにより当該財産を維持する義務を負い、さらに、当該法人の目的である事業を行うことを妨げることとなる処分をしてはならない義務を負うことになる(法人法172条2 項)。
しかし、一般財団法人・公益財団法人は、その実施する事業を実施・継続するために設立されたものであり、理事が責任を負うのは、まず第一に当該事業の実施・継続であって、その保有する財産の維持ではない。もちろん、その事業継続に不可欠な財産については、当該財産を維持することが、事業継続に直結することになるが、そのような財産でなければ、当該財産の維持は、当該法人の経営において必須なのであろうか。
このような観点から、基本財産を設ける必要があるのか、また、どのような財産を基本財産とすべきかについて、見直すことも考えられる。特に、現預金や金融資産については、インフレが進む現在において、基本財産に指定して財産の維持に努めることが、事業継続に有益といえるのか、あるいは、基本財産とせずに資産運用の対象とすべきなのか、改めて検討が必要と思われる。
西村あさひ法律事務所・外国法共同事業パートナー弁護士。東京大学法科大学院修了。公益・一般法人をはじめとする非営利法人の設立、内部統制システムの整備、寄付の受入れ、不祥事対応、紛争等の案件を取り扱う。『「みなし譲渡所得非課税特例」と株式贈与の実務』(2024年、第一法規)、『税理士のための非営利法人の実務』(2022年、第一法規)など、論文、著書多数。
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