財産・文書管理の実務と留意点―社員総会・評議員会後から始める立入検査対策―

竹内啓博
(たけうち・ひろよし 公認会計士・税理士)

はじめに

現在、多くの公益・一般法人は、年度決算、理事会、社員総会又は評議員会の準備に追われ何かと忙しい時期だと推測されるが、法人の実務担当者はこれらの会議後であっても気を抜いている暇はない。会議後に法令等で備置き、保管が求められている書類の整理・ファイリングを行い、6月中の事業報告の準備にすぐさま取り掛からなければならないからだ。また、立入検査の通知が届いた時に慌てないよう、印鑑や通帳、各種規程の運用状況を含め、管理全般につき、見直しが必要かどうか、セルフチェックを行うべきである。
そこで本稿では、実際の立入検査における指摘事項を踏まえつつ、一般法人にとっても参考となるよう、財産・文書管理の実務と留意点について解説する。本稿が法人の管理体制の強化につながり、立入検査等で指摘されることがなくなる法人が増えるきっかけとなれば幸いである。

Ⅰ 公益・一般法人を対象とする立入検査と税務調査の違い

1 公益法人(注1)に対する立入検査

公益法人を所轄する行政庁は、公益法人の事業の適正な運営を確保するために必要な限度において、公益法人に対し、その運営組織及び事業活動の状況に関し必要な報告を求め、又は当該公益法人の事務所に立ち入り、その運営組織及び事業活動の状況、帳簿、書類その他の物件を検査し、関係者に質問することができる(公益法人認定法第27条)。なお、内閣府及び東京都所管の公益法人では、概ね3年に1回の頻度で定期的な立入検査を実施するという方針が示されている。

2 移行法人(注2)に対する立入検査

移行法人の認可行政庁は、移行法人が公益目的支出計画に準拠した支出が行われていないか、財政状況の悪化によりそれが行えなくなる可能性がある(次の①

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