役員の判断ミスと損害賠償責任
2023年04月14日

熊谷則一
(くまがい・のりかず 弁護士)
(くまがい・のりかず 弁護士)
Ⅰ はじめに
公益法人も一般法人も非営利法人であり、利益を関係者で分配することを予定していない。法人の利益が大きくなったからといって翌事業年度の理事・監事(以下「役員」という。)の報酬が上昇することはなく、非常勤の理事は理事会出席のたびに日当程度の報酬を得るだけであるという法人も少なくない。そのため、公益法人でも一般法人でも、ボランティア感覚で当該法人の運営に当たっている役員も多い。しかし、役員の報酬の有無にかかわらず、役員には法人に対する種々の責任がある。ボランティア感覚の役員の中には、法人にどのような損失が発生しても自分には関係ないと、誤解している者もいる。このような誤解は、法人のガバナンスを脆弱にする。本稿では、公益法人・一般法人の理事の判断ミスに伴う責任について解説する。
Ⅱ 法人に対する理事の法的責任
1 理事の善管注意義務
公益法人・一般法人(以下、単に「法人」という。)と役員との関係は委任に関する規定に従う(法人法64条、172条 1 項)。したがって、理事は、受任者として委任の本旨に従って善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務(民法644条)、すなわち善管注意義務を法人に対して負っている。さらに、この善管注意義務を具体化する義務として理事には忠実義務があり、社団法人の理事は、法令及び定款並びに社員総会の決議を遵守し、社団法人のために忠実にその職務を行わなければならず(法人法83条)、財団法人の理事も、法令及び定款を遵守し、財団法人のために忠実にその職務を行わなければならない(法人法197条、83条)。
理事に善管注意義務違反があれば、理事は法人に対して債務不履行責任(民法415条)を負
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