Vol. 12 監事の監査について
※ これまでの内閣府メールマガジンの内容を再構成したものとなります。
監事は、理事の職務執行を監査(業務監査)し、計算書類等を監査(財務監査)することが求められています(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成18年法律第48号。以下「法人法」という。)第99条第 1 項、第197 条、第124条第 1 項、第 2 項、第199条)。そのために、監事には各種の権限が付与され、また義務・責任が課されています。
今回は、立入検査における指摘事例を挙げ、監事の監査業務についてご説明します。
まず、監事が、理事会への出席義務を果たしていないケースがあります。特に、複数いる監事のうち、一部の監事が理事会を欠席している場合が散見されます。
監事は、理事会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければなりません(法人法第101条第 1 項、第 197条)。
監事が 2 名以上の場合でも、その権限は各監事が独立して行使でき、義務は各監事がそれぞれ負うことになるため、すべての監事に理事会への出席義務が課されており、代理人の出席も認められません。
なお、上記の「必要があると認めるとき」とは、例えば、理事会において、代表理事及び業務執行理事が、自己の職務執行状況を理事会に報告していない場合等が考えられます。
仮に、理事の職務執行を監査する監事が、代表理事等による定期報告がなされていないにもかかわらず、意見を述べない場合は、監事としての義務を怠り、権限を十分に行使していないこととなります。
次に、監査報告書が適切に作成されていなかった、又は、記載すべき事項が不十分であったというケースがあります。
各事業年度の計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書は、監事の監査を受けなければなりません(法人法第124条第 1 項、第199条、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律施行規則(平成19年内閣府令第68 号。)第33条第 2 項)。
すなわち、監事は、計算関係書類、事業報告及びその附属明細書を受領したときは、監査報告を作成しなければなりません。そして、記載する事項は、監事の監査方法及びその内容、受領した書類についての意見、理事の職務の遂行に関し、不正の行為又は法令・定款に違反する重大な事実があったときは、その事実等になります(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行規則(平成19年法務省 令第28号。以下「法人法施行規則」という。)第36条、第 45条、第64条)。
仮に、監事が、計算書類等の調査をおざなりに行い、監査報告を毎年度定型的に記載して提出しているような場合は、不正や横領が起こりやすい環境になってしまうおそれがあり、このような場合も、監事としての権限を十分に行使しているとは言えません。
前記のほか、監事は、公正不偏の態度及び独立の立場を保持しつつ、その職務を適切に遂行するため、理事及び使用人等との意思疎通を図り、情報の収集及び監査の環境の整備に努めなければなりません(法人法施行規則第16条第 2 項、第 3 項、第64条)。
また、理事又は理事会は、監事の職務の執行のための必要な体制の整備に留意しなければなりません(法人法施行 規則第16条第 2 項、第64条)。
法人において、このような環境や体制の整備が十分でない場合には、適切なガバナンスの確保を図り、不正・横領を未然に防止するなどの観点から、必要な整備に取り組むことが重要です。
以上のように、監事は、業務及び財務の両面について監査責任を有しており、適正な法人運営を支えていく上で重要な機能を果たしているものと考えられます。
公益法人は、法律に基づき認定され、税制優遇を受けて活動する法人です。その監事は、上記の重要な機能を果たせるよう常に自覚を持って職務を遂行することが必要です。
文責●内閣府公益認定等委員会事務局