市民参加と社会課題解決

大原昌明 
(おおはら・まさあき 北星学園大学教授 (公社)非営利法人研究学会学会常任理事)
 
 

 昨年、NPO法施行25周年を迎えた。2020年からは、行動制限によりまちづくりや環境活動を行っていた、いわゆるキャンペーン系の法人が活動の休止・中止に追い込まれ、介護や福祉活動を行っている事業系法人もまた、 3密回避の中での活動を余儀なくされた。このような社会状況から脱したと思われる2023年に法施行25周年を迎えたとはいえ、それはひとつの区切りを迎えたに過ぎず、いまだコロナ禍以前の活動ができない法人も多数あるものと推察される。  

 ところで、私が理事長(非常勤)を務めて いる北海道NPOサポートセンターは、2024 年 6 月に『NPOのDNA』という冊子を公開 した(WEBサ イ ト に も 掲 載)。 こ れは、 2022年 2 月に立ち上げた「北海道のNPO戦 略づくりプロジェクト」ワーキンググループ が、その後、道内各地で行ったワークショップや北海道NPOフェスティバル2023(2023 年10月)を通して、参加者とともにNPOの原点や本質を再確認するとともに、北海道におけるNPO活動を拡充させるために、「対話」をキーワードに中間支援組織としての視線からまとめたものである。  

 この冊子の中で繰り返し強調されていることは、NPOが市民参加を促す存在であること、そしてNPOが社会課題解決に重要な役割を果たすということである。法施行25年を経過した現在、NPOという言葉が社会的に浸透する一方、市民参加や社会課題解決というNPOの目的が忘れ去られているように思われてならない。この意味で、再度、NPOの存在意義を振り返ることは大事なことである。  

 ここで、非営利法人制度を振り返れば、 1998年のNPO法施行の10年後、2008年には公益法人制度改革が行われた。この制度改革後、比較的設立しやすい一般社団法人(非営利型)もまた、市民活動の担い手のひとつとみなされるようになった。非営利という観点で見れば、2022年10月に法制化された労働者協同組合も市民活動の担い手制度といえる。  

 先日、「NPO法人制度はあれこれ面倒くさい、一般社団法人なら事業報告義務もないし」という発言を聞いた。これを聞いて驚くと同時に、一般的な市民の感覚はこのようなものなのかもしれないと感じた。  

 もちろん、大事なことは市民の力による社会課題解決である。そのためにどの法制度を選択するかは自由である。選択肢が広がった現在、各法人制度の目的や制度について正しく伝えていくことは、非営利法人を研究対象にしている我々の責務でもある。

執筆者Profile
大原昌明(おおはら・まさあき)
北星学園大学経済学部教授。大学生協事業連合副理事長、NPO法人北海道NPOサポートセンター理事長、北海道公益認定等審議会委員長。専攻は、非営利法人会計・管理会計。公益法人関連の著書に『非営利組織会計の基礎知識―寄付等による支援先を選ぶために―』(白桃書房、共著)、『非営利用語辞典』 (全国公益法人協会、共著)他、非営利法人の会計に関する著書、論文多数。

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