立入検査報告書から学ぶ対策
―よくある指摘事項とは―

山下雄次
(やました・ゆうじ 税理士)

はじめに

東京都では、法人運営における課題の早期発見や自主的な解決に役立てていただくことを目的として、定期立入検査の実施概況について、年度ごとに報告書を作成・公表している。当該報告書は、特に指摘が多かった事項について具体的な事例を掲載するとともに、それぞれ注意すべきポイントがコンパクトにまとめられている。そして報告書はWebサイト「公益法人information」上にも掲載されており、誰でも見ることができるようになっている。
立入検査を受ける側である公益法人にとっては、事前の自己点検に利用することもできるため、適正な法人運営の一助になると考えられる。
本稿では、当該報告書の指摘事項の中から多くの公益法人にとって有益であろうテーマを抽出して、具体的な対応策を検討していく。 

事業実施に必要な手続

【指摘事項 1 】事業の一部を追加又は廃止するなど事業内容に変更があったが、行政庁への変更手続を行っていない。公益法人は公益認定の申請の際に、公益目的事業の種類や内容、収益事業等の内容について申請書に記載することが定められており、これらの変更を行うときには変更認定申請または変更届出を行う必要がある。しかしながら、変更認定申請や変更届出の失念は、非常に多発している事象である。
 
変更認定申請は、変更前にあらかじめ行政庁の認定を受ける手続であって、変更届出は、変更後に遅滞なく行政庁へ届け出る手続である。
この両者は、事前手続と事後手続の違いがある。
公益目的事業の実態に影響がないような軽微な変更であっても、変更届出が必要になる。例えば、助成金額の増額、対象の拡大のような変更は元より、事業名を変更した場合についても変更届出が必要になる。
 
現行制度では、収益事業等についても、事業内容を変更(新規事業を立ち上げる場合や事業の一部を廃止する場合を含む。)しようとする場合は、変更認定申請を受ける必要がある。
ただし、令和 7 年度から収益事業等の内容の変更については、変更認定事項から届出事項に見直しが行われる予定となっている。

事業実施に必要な規程等の整備とそれに沿った事務処理の実施

【指摘事項 2 】講師等謝礼が発生する場合、根拠となる謝礼基準等が定められていない。講師等への謝礼が発生する場合、根拠となる謝礼基準等を整備しておく必要がある。また事業実施上、基準により難い場合であっても謝礼金額の決定に疑義が生じないよう、適切なプロセスを検討の上、対応することが求められる。
公益法人は、特別の利益の供与が禁止されている。謝礼等の金額の根拠が明確ではないと、対価性がある謝礼の支給であっても利益供与の疑義が生じる可能性があるので、謝礼基準等の整備は重要性が高いだろう。

事業実施における契約関係書類の適正管理

【指摘事項 3 】事業対象者等との契約に関して、契約書の所在が不明あるいは契約書自体を取り交わしていない。公益法人として、契約内容を明

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