「公益国家独占」から「公益の自分ごと化」へ

(かとう・ひでき (一社)構想日本 代表)
現在の公益法人制度は、構想日本の提言が実現した第2号だ。構想日本は1997年4月の発足時にNPO法案を発表し、その後すぐに省庁の設置法と公益法人制度(旧民法34条)の提言作成に着手した。
阪神淡路大震災を機に盛んになったボランティア活動を受けて、当時NPOの制度的基盤を整えるべきだという声が高まっていたが、構想日本が上述のような“地味”なテーマを扱ったのは、公益=みんなの利益は本来国民が決め、担うもので、官=行政はその一部を担うという位置づけを明確にすることが、民主主義において重要だという認識からだ。民法学者の星野英一氏が民法34条について「公益国家独占主義」と言っている(『民法のすすめ』岩波新書)が、これを変えることから始めようという思いである。
具体的には、1997年12月から民法の森嶌昭夫先生を座長として、「民間法制審議会」をスタートし、
などの内容を柱とする提案をまとめた。
明治29年(1896年)に制定以来の公益法人制度を根幹から変える大改正だったが、関係者への説得を重ね、2001年5月、中間法人法成立の際に本件を付帯決議とし、約1年後には「公益法人制度の抜本的改革に向けた取組みについて」閣議決定。そして1年後から「有識者会議」が開かれた。1年間で26回開催という驚異的なペースだったが、とても闊かっ達たつな議論が行われた。民間の非営利・公益活動の盛り上がりを受けた当時の時代を反映していたと言えよう。
2006年6月に3法が成立するが、認定等委員会の最初の人選にも全面的に関わった。公益法人史上初の試みに対し、それこそ官民が総力戦で進めたのだ。
既に20年近く経ち、本年4月の認定法改正など制度も定着したが、認定等委員会の池田守男初代委員長が施行1年後に出した談話でこの稿を閉じたい。
「真に豊かな社会を目指すには、(中略)民による公益活動が不可欠です。私は、国民の生活に密着している民こそ、国、地方自治体以上に幅広い公益活動ができると信じていますし、またその責任もあると考えています。民は官を『補完』する存在ではなく、むしろ公益活動の『主体』であり、豊かな社会の源です。」
(一社)構想日本 代表。大蔵省に勤務後、日本に真に必要な政策を「民」の立場から提言そして実現するため、1997年に非営利独立の政策シンクタンク構想日本を設立。上述の池田委員長の言葉をふまえ他人ごとになっている公共の自分ごと化を進めるべく、全国で「自分ごと化会議」を行っている。著書『ツルツル世界とザラザラ世界 世界二制度のすすめ』(スピーディ、2020年)ほか。
公益・一般法人オンラインとは
財団法人・社団法人に特化した支援プログラム"シェアコモン200"の利用法人様向け実務専門誌『公益・一般法人』の記事を中心に、公益・一般法人に関するニュースや専門家による解説などをお届けする情報配信プラットフォームです。
詳しくはこちら
無料登録のご案内
「公益・一般法人オンライン」に無料登録すると、登録の方限定の記事をご覧いただけるなど、実務に役立つさまざまな特典をご用意しております。

限定記事や
実務カレンダーが読めます!
「公益・一般法人オンライン」の無料登録の方限定記事や各月の事務局の作業内容がつかめる「実務カレンダー」をご覧いただけます。

最新の法改正に関する
セミナーなどの情報を受け取れます!
公益認定法改正など、最新の法改正とその対応に関するセミナーをはじめ、公益・一般法人の運営に必要な知識を深めることができる講習会の情報をお受け取りいただけます。

よくあるご相談内容をピックアップして
メールにてお届けいたします!
よくあるご相談内容に弁護士や税理士などの専門家が回答するQ&A集を、メールにてお受け取りいただけます。日々の業務のお困りごとや疑問解決にお役立てください。

公益法人・一般法人に特化した専門書籍を
10%オフで購入できます!
公益・一般法人オンラインを運営する公益法人協会では、社団・財団法人のための出版物を多数発行しております。無料登録いただいた方は、通常価格から10%割引でご購入いただけます。