公益法人制度の変革と進化
―出資がもたらす新たな展開―

(おおうち・たかみ (一社)構想日本 プロジェクトリーダー(公益法人担当))
明治時代にまで遡る公益法人制度は2008年の改革が大きな転換点となり、主務官庁制が廃止されるとともに法人の設立手続と公益性の判断が分離されるなど大幅な改正が行われた。その後も社会情勢の変化に合わせた検討が続けられ、昨年成立した改正認定法が、本年4月1日から施行されている。その主なポイントは次の3 つである。
公益活動を支える資金の活用の幅を広げ、法人の持続的な発展を可能にする。
申請・認定手続の負担を軽減し、法人が迅速かつ柔軟に公益活動を行えるようにする。
法人の内部統制を強化し、説明責任を果たすことで、社会的信用の向上を図る。
中でも特に注目すべき点は、公益法人による出資の考え方がより明確になったことである。資産運用として株式を保有する場合の法的制約が明確化されるとともに、社会的課題の解決に貢献する出資の公益性判断について具体的な基準が示され、「出資」が一つの事業区分として位置付けられたのである。
こうした背景には、2023年の「新しい資本主義実行計画」で民間が公的役割を担う施策が打ち出されたことがある。インパクトスタートアップへの寄付性の高い資金の流れを拡大する方針が示され、その一環で公益法人による出資や助成が促進されることとなった。
出資の趣旨・目的に公益性があり、経済的利益の獲得を主たる目的としないことなどの前提条件を満たす公益法人にとっては、出資による社会貢献活動を積極的に行える制度的環境が整った。出資先の事業内容を継続的に把握して公益目的が達成された際や意義が失われた際には適切に対応するとともに、インパクト測定等の評価を踏まえて業務改善を促し、結果公表により透明性を高めるといった実施手法に意を用いることが重要となる。
改正認定法によって、公益法人が社会的課題に関わる選択肢は確実に広がった。各法人が自らのガバナンスをしっかりと整備して、社会的価値を生み出しながら時代の要請に応えるためどのように活動していくかという長期的な視点が求められる。そして、新たな展開を積極的に進めることで、真に公益を目的とした事業の可能性が大きく広がっていくことが期待される。
2008年より公益認定等ガイドラインの公表に合わせて、公益法人制度改革を担当。様々な団体の公益法人への移行を支援。内閣府公益認定等委員会の委嘱により新公益法人制度普及啓発員、新公益法人制度に係る相談員、公益法人等制度に係る相談員を歴任。「公益法人制度の概要と組織運営」「ガイドライン重要ポイントの解説」」等、講演多数。
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