其之二十八 公益法人の区分経理
―公益法人会計検定試験より―

(ふるいち・ゆういちろう 大原大学院大学教授)
公益法人特有の区分会計
公益法人会計においては、職員の給料の支払いについて、その費用を事業費と管理費に分けて記録する必要がある。通常、企業会計においてはこのような処理は行われないため、以下のように記録する。
左側で費用の発生と右側で資産の減少が記録されるだけで記録が完結するが、公益法人会計の場合には、その費用の発生について区分して記録を行うことで運営上、必要な情報が記録されるため、同じ給料でも事業費に含まれる費用と管理費に含まれる費用が分けて記録される。従業員に支払う金額が同じだとしてもその費用の記録において求められる内容が両者で異なる。
検定試験の活用
大学で簿記を教えていると日本はかなり簿記教育が進んでいる国だと感じることが多い。就職活動のために大学生が取得する資格として簿記検定試験はここ何年も人気の資格であり続けているし、様々な場面で会う人に簿記や会計を教えていることを話すと、学生時代に簿記を勉強したことがあるという人に会うことは珍しくない。それらの人の多くは、口を揃えて、「難しかった」「楽しくなかった」「ほとんど忘れた」と言うが、ごく稀に「意外と面白かった」「計算があうと気持ちがよかった」というポジティブな感想を持っている人がいるから世の中分からないものである。
それらの土壌が形成される背景に各種の簿記の検定試験の存在があることは想像に難くない。検定試験を目安として学習することの最大のメリットとしては、幅広く、体系的な知識を学べる事、また実際に解答を作成するためにインプットだけでなく、アウトプットを伴い理解を深めることができることにあり、そのことが簿記の知識に大いに貢献していると言える。
その点で公益法人会計の概要を体系的に、平たく言えば全体をざっくりと理解するために、公益法人会計検定試験などを活用することも実務の入り口としては多くのメリットがある。
公益法人会計検定試験のポイント
現在の3級試験は問題が3部構成になっており、問題Ⅰとして公益法人会計の制度や基礎的理論についての選択式の問題、問題Ⅱとして個別の取引についての仕訳の問題、そして問題Ⅲはこの問題Ⅱの取引記録を含めた決算に関する問題となっている。
仕訳の問題について言えば、勘定科目は選択式なので勘定科目を一字一句覚えるよりもその内容を理解することに重きを置いた方が理解が深まるかもしれない(要するに、良い点が取れるようになる)。
問題の難易度としては、企業の経理においてメジャーな簿記検定試験である日本商工会議所の簿記検定試験3級(通称、日商3級)よりも基礎的な部分に重きが置かれており、仕訳の問題や決算の総合問題の内容を見てもシンプルな問題となっている。
一方で、公益法人会計固有の理論的な内容についても出題されている。一般的な簿記の検定試験においては、このような出題はメジャーではないが、これから公益法人会計を体系的に学ぼうという人にとっては、計算や個別の処理だけでなく会計の意義やその目的を併せて学ぶ機会になるとも言える。計算問題、理論問題全体を概観してみてもその敷居はそれほど高くないので、企業会計の内容を含めてこれまで簿記を勉強したことが無いビギナーでも、しっかりと準備をすれば十分に対応可能な内容である。
公益法人会計検定試験の範囲の中には、例えば、冒頭に挙げたような公益法人会計固有の処理も含まれている。企業会計と公益法人会計の違いが言わば検定試験のポイントにもなっていると言えるだろう。
月刊公益オンラインとは
財団法人・社団法人に特化した支援プログラム"シェアコモン200"の利用法人様向け実務専門誌『月刊公益』の記事を中心に、公益・一般法人に関するニュースや専門家による解説などをお届けする情報配信プラットフォームです。
詳しくはこちら
無料登録のご案内
「月刊公益オンライン」に無料登録すると、登録の方限定の記事をご覧いただけるなど、実務に役立つさまざまな特典をご用意しております。

限定記事や
実務カレンダーが読めます!
「月刊公益オンライン」の無料登録の方限定記事や各月の事務局の作業内容がつかめる「実務カレンダー」をご覧いただけます。

最新の法改正に関する
セミナーなどの情報を受け取れます!
公益認定法改正など、最新の法改正とその対応に関するセミナーをはじめ、公益・一般法人の運営に必要な知識を深めることができる講習会の情報をお受け取りいただけます。

よくあるご相談内容をピックアップして
メールにてお届けいたします!
よくあるご相談内容に弁護士や税理士などの専門家が回答するQ&A集を、メールにてお受け取りいただけます。日々の業務のお困りごとや疑問解決にお役立てください。

公益法人・一般法人に特化した専門書籍を
10%オフで購入できます!
月刊公益オンラインを運営する公益法人協会では、社団・財団法人のための出版物を多数発行しております。無料登録いただいた方は、通常価格から10%割引でご購入いただけます。