代表理事の認知症リスクに備える
―法人運営を止めないための体制整備―

中尾武史
(なかお・たけし 弁護士)
 

Ⅰ はじめに

 公益法人や一般法人などの法人運営において、理事の高齢化はますます避けられない課題となっています。特に理事が認知症を発症すると、法人の意思決定や対外的な信用、さらには日常業務の遂行が著しく阻害されるおそれがあります。
 中でも代表理事・業務執行理事の場合は、法人運営の舵取り役を失うことになり、その影響はさらに深刻になり、組織全体の運営が難しくなる場合があります。
 本稿では、理事に認知症の発症が疑われた際の初期対応から、任期満了・辞任・解任手続、代表理事・業務執行理事に特有の留意点等について解説します。本稿を通じて、法人運営者や理事会メンバーの皆様が、高齢理事の認知機能低下に備え、適切な体制構築と迅速な対応ができるようにご活用いただければ幸いです。 

Ⅱ 理事の認知症を疑った場合の初期対応

1 家族・関係者との連携

 理事が普段と異なる言動(議事内容を誤認、物忘れの増加、判断ミスの散見等)を示した場合、まずは家族や身近な関係者と早期に情報を共有します。家族との面談では、配偶者や子ども、近親者から「日常生活での記憶障害」「金銭管理のトラブル」「通院歴」などを丁寧にヒアリングし、法人ができる範囲で状況を整理します。注意点としては、憶測や誇張を避け、本人の名誉やプライバシーを尊重することです。
 家族側が提供する理事の情報と法人側の情報の2つの視点で「業務遂行能力や業務遂行に必要なサポートが何か」を把握することが必要です。 

2 医師診断書等による認知機能の把握

 理事の意思能力に不安がある場合、家族等の協力を得て医師の診断書を取得する必要があります。認知機能検査(MMSEやHDS-R、時計描画

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