新公益法人会計基準・特定資産の 表示の廃止、その先に見えるもの

(かめおか・やすお 公認会計士・(公社)非営利法人研究学会常任理事)
公益法人制度改革に伴い、公益法人会計基準の改正(以下、新会計基準)が行われ、令和7年4月1日以降に開始する事業年度(ただし、3年間は従前の会計基準(以下、旧会計基準)を適用できる)から適用となった。
新会計基準は、公益法人に期待される財務情報の開示の考え方を明確化するとされ、公益法人の特性を踏まえつつ、多様なステークホルダーにとってわかりやすい財務情報の開示とするために公益法人特有の会計処理、特に基本財産、特定資産の位置づけの整理をしたとされている。
旧会計基準では、固定資産は、基本財産、特定資産、その他固定資産に区分されていたが、新会計基準では固定資産は、有形固定資産、無形固定資産、その他固定資産となった。そして、基本財産、特定資産に計上されていた現金預金、投資有価証券等は、構成資産の内容に応じた表示科目に変更となった。例えば、特定資産の中身の資産が「預金」であれば、流動資産の現金預金(以下、預金)で表示し、投資有価証券であれば、その他固定資産の投資有価証券で表示することとなった。
具体的には、旧会計基準では○○建設のための寄付金等を受け入れ、普通預金で保有していた場合にも、当該預金は、法人の意思で使用できる、使途の制約のない預金(流動資産)ではなく、○○建設に使途が制約されているため、○○建設積立資産(固定資産・特定資産)に表示されていた。一方、新会計基準では全額、預金(流動資産)に表示されることになり、当該金額が多額だと流動資産と固定資産の金額が逆転することもありうる。
また、新会計基準では使途の制約のある多額の預金があっても、使途の制約のない預金と区分なく一括で預金(流動資産)として表示されることになり、法人の事業費規模を超えた多額の預金を不必要に保有していると誤解される懸念がある。
新会計基準では、使途拘束資産を有する場合は、注記で表示することとされている。本表(貸借対照表)だけでは、使途の制約のある預金(使途拘束資産)と使途の制約のない預金の区別はできず、注記を見て、初めて、流動資産の預金に使途の制約のある預金(使途拘束資産)が含まれていることが判る。追加情報である注記を見なければ、正しい判断ができないのではなく、本表で間違った判断を招かないことが重要である。
改めて、旧会計基準、社会福祉法人会計基準、学校法人会計基準等で特定資産を本表で表示している意義について考えさせられた。
大光監査法人会長。日本公認会計士協会常務理事(非営利法人・公会計担当)、総務省「公益法人の効率的・自立的な事業運営の在り方等に関する研究会」委員、総務省「公益法人会計基準検討会ワーキンググループ」委員、内閣府「新たな公益法人等の会計処理に関する研究会」委員、内閣府公益認定等委員会「会計に関する研究会」参与等を歴任。
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