非営利組織におけるサステナビリティ開示の展望
(ふるしょう・おさむ
青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科教授
(公社)非営利法人研究学会会長)
英国において、2025年3 月に民間公益活動の担い手たるチャリティの実務勧告書(以下、チャリティSORPという)の改訂を意図した2026年公開草案が公表された。
当該公開草案のなかで注目すべき点の1つは、チャリティの規模に基づく開示規定の見直しを提案したことにある。理事者年次報告書(以下、TARという)において開示が求められるナラティブな情報は、以下の3つの階層(Tier)ごとに規定される。
階層1 に属するチャリティは開示要件が軽減され、他方で階層3 に属するチャリティには階層1 及び階層2 の要件を満たすとともに、さらに追加的な開示が求められる。
また、2026年公開草案におけるもう1つの注目すべき点は、TARにおいて「サステナビリティ」のセクションを新たに配置し、そのうえで各階層に応じて強制と奨励を区別した強弱のある開示要求を定めていることにある。特に、階層3 に属する規模の大きいチャリティに対しては、サステナビリティ情報として、環境、社会、ガバナンス(ESG)課題にいかに対応し、取り組んでいるのか、その要約を開示することが強制される。そこでは、TARにおいて、気候関連リスクを管理し、機会を具体化するための目標と、これに対する進捗度の評価に適用される重要業績指標(KPI)の詳細、及び当該KPIの基礎にある計算方法の説明等が例示されている。また、ガバナンス及び社会課題に関連して、社会的機会、プライバシーとデータ保護、理事会のダイバーシティ及び企業倫理等の詳細を含めることもできるとされる。
チャリティSORPはチャリティの財務諸表の利用者に対する高い水準のアカウンタビリティと透明性を確保することを意図しており、最低限の開示規定の遵守に留まることなく、任意の開示を奨励してきた。TAR開示制度を通じて、財務報告と一体性のあるサステナビリティ報告を提案し、形成していくための土台が整備されてきたと言えるであろう。
ESG課題に対するチャリティの対応にステークホルダーの関心が高まる一方、チャリ
ティのサステナビリティに対する優先度は低く、組織体制やプロセスの整備は遅れている。
日本の非営利組織においても、サステナビリティ開示の在り方は、財務報告の枠組みに係る重要かつ新たな検討課題となっている。
青山学院大学大学院経営学研究科博士後期課程満期退学、博士(プロフェッショナル会計学)。神奈川県公益認定等審議会会長、公益法人会計検定試験委員長、日本会計研究学会評議員、日本公認会計士協会適正手続等審査会委員等、元内閣府「公益法人の会計に関する研究会」参与。主著に、『統合財務報告制度の形成』(単著、中央経済社)、『国際統合報告論』(編著、同文舘出版)等。
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