理事会の権限と事務局の職務の違い
―法律と作業から考える役割―

中尾武史
(なかお・たけし 弁護士)
  • CATEGORY
    • 法人運営
  •  対象法人格 
    • 公益法人・一般法人
  •  対象職位 
    • 職員・管理職
目  次
 

Ⅰ はじめに

 公益法人や一般法人の運営は、理事会による意思決定と事務局による実務執行という二つの車輪によって支えられています。理事会は法人の方向性を定め、事務局はその決定を現実の活動として実行します。理想的な運営とは、この二者がそれぞれの役割を理解し、適切に機能している状態です。
 しかし、現実の法人運営の現場では、この線引きがあいまいなまま運用されている例が少なくありません。事務局が理事会の役割を越えて処理してしまったり、逆に日常業務まで理事会に上げてしまい、意思決定が遅れたりする場合などです。
 本稿では、法人法の規定を踏まえながら、理事会と事務局の法的位置づけと職務の違いを整理し、「理事会で決めるべきこと」と「事務局が担うべきこと」の線引きと判断の基準を実務の視点から考えていきます。 

Ⅱ なぜ役割の明確化が必要なのか

 役割の明確化は、単に作業分担を整理するためのものではありません。それは、法人のガバナンスを支える仕組みそのものであり、①責任の明確化、②透明性の確保、そして、③組織の継続性という3 つの観点から極めて重要です。このうち、①②には法令上の問題が、③には実務面の問題が絡んできます。 

1 理事と事務局の責任の可視化

 法人法において、理事個人には「善管注意義務」(法人法64条)と「忠実義務」(法人法83条)が課されています。
 理事は法人のために最善の注意をもって職務を行う責任を負い、その職務には意思決定と監督が含まれます。ですから、理事会で決めるべき事項を事務局に任せきりにしていた場合、たとえ事務局が判断を誤っても、法人のみならず理事会が監督義務を怠ったとして責任を問われる可能性があります。

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