公益目的事業の該当性チェック!
基準と確認事項を詳しく解説

山下雄次
(やました・ゆうじ 税理士)

 

 

1.公益目的事業とは?

⑴ 要件

 公益目的事業とは、学術、技芸、慈善その他の公益に関する認定法別表各号に掲げる種類の事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものをいいます(認定法第2条第4号)。

 

 つまり、要件として以下の2つが求められます。
 ①認定法別表各号に掲げる種類の事業であること
 ②不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものであることが求められます。

 

⑵ 23種の事業区分

 上記①の認定法別表各号に掲げられている事業は、その性質上何らかの形で不特定かつ多数の者に利益をもたらすと考えられます。国民の利益のために制定されている立法当時有効な法律の目的規定を抽出・集約し、列挙したものです。およそ公益と考えられる事業目的は、別表各号のいずれかに位置付けることができます。

 

 具体的には下記のような事業が掲げられています。

 

【公益目的事業の23種の事業区分】

① 学術及び科学技術の振興を目的とする事業
② 文化及び芸術の振興を目的とする事業
③ 障害者若しくは生活困窮者又は事故、災害若しくは犯罪による被害者の支援を目的とする事業
④ 高齢者の福祉の増進を目的とする事業
⑤ 勤労意欲のある者に対する就労の支援を目的とする事業
⑥ 公衆衛生の向上を目的とする事業
⑦ 児童又は青少年の健全な育成を目的とする事業
⑧ 勤労者の福祉の向上を目的とする事業
⑨ 教育、スポーツ等を通じて国民の心身の健全な発達に寄与し、又は豊かな人間性を涵養することを目的とする事業
⑩ 犯罪の防止又は治安の維持を目的とする事業
⑪ 事故又は災害の防止を目的とする事業
⑫ 人種、性別その他の事由による不当な差別又は偏見の防止及び根絶を目的とする事業
⑬ 思想及び良心の自由、信教の自由又は表現の自由の尊重又は擁護を目的とする事業
⑭ 男女共同参画社会の形成その他のより良い社会の形成の推進を目的とする事業
⑮ 国際相互理解の促進及び開発途上にある海外の地域に対する経済協力を目的とする事業
⑯ 地球環境の保全又は自然環境の保護及び整備を目的とする事業
⑰ 国土の利用、整備又は保全を目的とする事業
⑱ 国政の健全な運営の確保に資することを目的とする事業
⑲ 地域社会の健全な発展を目的とする事業
⑳ 公正かつ自由な経済活動の機会の確保及び促進並びにその活性化による国民生活の安定向上を目的とする事業
㉑ 国民生活に不可欠な物資、エネルギー等の安定供給の確保を目的とする事業
㉒ 一般消費者の利益の擁護又は増進を目的とする事業
㉓ 前各号に掲げるもののほか、公益に関する事業として政令で定めるもの

(認定法 別表(第2条関係))

 

2.公益目的事業に認定されるには?

⑴ 公益目的事業該当性の判断基準

 下記①~⑥のすべてに該当する場合に公益目的事業に該当すると整理されます。公益認定の審査・監督に当たっては、原則として、公益目的事業として求められる趣旨等に応じて、重点的にチェックを行う必要がある事項のみ確認されます。

 

 それ以外の事項については、法人の事業内容に照らして当該事情を確認すべき特段の事情がある場合を除いて、法人のガバナンスに委ねることになっています。

 

【公益目的事業該当性の判断基準】

① 法人の掲げるその事業の「趣旨・目的」が、認定法別表各号に該当し、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものであることが求められる
② 「趣旨・目的」だけでなく、その「事業内容」及び「手段」が、当該趣旨・目的を実現するためのものであること(事業の合目的性)を合理的に説明できること
③ 当該目的を実現するための事業の質(専門性や公正性、不利益発生の排除など)が確保されていること
④ 特定の者又は特定の集団の利益に留まらないこと(受益の機会の公開など)
⑤ 事業内容に透明性があること
⑥ 営利企業等が実施している事業と類似する事業にあっては、社会的なサポートを受けるにふさわしい公益目的事業としての特徴があること

(ガイドラインp23,24)

 

⑵ 公益目的事業該当性の確認方法

 典型的な事業については、公益目的事業該当性を簡便に判断することができるよう、19事業区分ごとのチェックポイントを示しています。チェックポイントに示した事業区分は、多種多様な公益目的事業の一部に過ぎません。

 

 チェックポイントにない事業については、事業の特性に応じて軽重を付け、重要事項に集中して公益性の確認が行われることになります。

 

【ガイドラインにチェックポイントが示されている19事業】

① 検査検定
② 資格付与
③ 講座、セミナー、育成
④ 体験活動等
⑤ 相談、助言
⑥ 調査、資料収集
⑦ 技術開発、研究開発
⑧ キャンペーン、○○月間
⑨ 展示会、○○ショー
⑩ 博物館等の展示
⑪ 施設の貸与
⑫ 資金貸付、債務保証等
⑬ 出資
⑭ 助成(応募型)
⑮ 奨学金
⑯ 表彰、コンクール
⑰ 競技会
⑱ 自主公演
⑲ 主催公演

(ガイドラインp48-69)

 

3.公益目的事業該当性を判断するための具体的な確認事項

⑴ 事業の趣旨・目的

 公益目的(認定法別表に掲げる目的)及び不特定多数の者の利益の増進が主たる目的として位置付けられており、適切な方法で明らかにされているかが確認されます。定款上の事業や目的が抽象的である場合などには、当該事業が定款上の事業や目的に根拠があるかの判断ができない可能性があります。定款には具体的に記載することが望ましいです。

 

⑵ 収益性の高い事業についての確認事項

① 公益目的事業に収益性が高い付随的事業が含まれている場合

 事業計画等に記載された収益性の高い付随的事業が、幹となる事業の効果的な実施等に資することの合理性が疑われる場合には、追加的に説明を求めることがありえます。

 

 この場合における付随的事業とは、幹となる事業の1割程度(単発の事業にあっては3割程度)を超えない事業となります。付随的事業を超える事業規模になると、独立した事業として捉えることになります。

 

 収益性の高い事業を公益目的事業の一部として実施する場合は、次の要件を満たす必要があります。

・幹となる公益目的事業の趣旨・目的のために実施されるものであること
・当該事業の規模・内容・実施の態様が、幹となる公益目的事業の趣旨・目的に即したものであり、かつ、必要な範囲を超えて行われないものであること

② 営利企業等が行う事業と類似する事業を営む場合

 なぜ公益法人が当該事業を実施する必要があるか、当該事業を通じてどのように社会に貢献しようとし、そのためにどのような態様で当該事業を実施しようとしているか等が問われます。

 

 公益目的事業としての特徴がなく、営利企業等による類似事業の実施状況を勘案して、高い税制上の優遇措置を受けるなどの社会的なサポートを受けてまで公益法人が実施する意義が認められない場合には、公益目的事業として認められません。

 

⑶ 受益の機会の確認事項

 不特定かつ多数の者に受益の機会が開かれているか、また、機会が限定される場合には、当該限定を行う合理性及び当該限定があっても利益が不特定多数の者に及ぶことについて合理的説明があるかが問われます。

 

⑷ 受益者の義務・受益の条件についての確認事項

 受益者の義務・受益の条件は、申請書に記載された公益目的事業の趣旨・目的に照らして合理的なものであるかが問われます。当該義務により、営利企業等や法人関係者に、合理的な範囲を超える利益が生じると見込まれる場合には、公益目的事業としては認められません。

 

⑸ 事業の合目的性の確保についての確認事項

 事業内容に応じた適正運営の確保、事業内容に応じた専門家の関与、訓練、機材の確保、事業の趣旨に応じたプロセス(ニーズ調査や関係者の参加)の確保など、事業の趣旨・目的を踏まえ、必要に応じて、事業の質や成果を確保する取組がなされているかが問われます。

 

4.公益目的事業に関するよくあるQ&A

Q1 公益目的事業と収益事業の違いは?
A 公益目的事業は、公益法人認定法に基づき、不特定多数の利益を増進することを目的とした事業です。一方、収益事業は、法人の財政的基盤を強化するために行われる営利を目的とした事業です。両者は目的や性質が異なるため、会計上も明確に区分して管理する必要があります。

 

Q2 公益目的事業の収支が黒字でも問題ありませんか?
A 公益目的事業においては、中期的収支均衡(従来の収支相償)が求められます。これは、中期的な事業の収入と支出が概ね均衡していることを意味します。したがって、一時的な黒字が発生した場合でも、中期的には収支が均衡するのであれば問題ありません。

 

Q3 公益目的事業に該当しない場合はどうなりますか?
A 事業が公益目的事業に該当しない場合には、その事業は収益事業等として分類されます。公益目的事業と認められる事業がないと、公益法人としての要件を満たすことができません。ほかに公益目的事業があって、財務基準等をクリアできるのであれば公益法人として存続することができます。なお、収益事業等として分類された事業は、法人税の課税対象となる可能性があります。

 

Q4 定款変更が公益目的事業の該当性に影響しますか?
A はい、定款変更は公益目的事業の該当性に大きな影響を与える可能性があります。公益法人では、定款で定めた目的や事業内容が法人の公益性を判断する基準の一つとなります。そのため、定款変更を行う際には、新しい内容が公益認定基準を満たすかどうかを慎重に検討し、必要に応じて認定機関に確認を取ることが求められます。

 

執筆者Profile
山下雄次(やました・ゆうじ)

税理士・行政書士。全国公益法人協会相談室顧問。税理士試験試験委員。平成18年に山下雄次税理士事務所を設立。著書に『チャットでわかる社団・財団の経理・総務の仕事』(全国公益法人協会)等。

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