活動計算書における純資産増減の表示区分と純資産の振替
2021年03月11日

金子良太
(かねこ・りょうた 國學院大學教授)
(かねこ・りょうた 國學院大學教授)
- CATEGORY
- 会計実務・活動計算書
- 対 象
- 公益法人・一般法人
目 次
- Ⅰ 本稿の問題意識
- Ⅱ 費用の表示区分と純資産の振替の会計処理
- 1 活動計算書上における費用表示と純資産振替の意義
- 2 費用を無拘束純資産に計上し純資産の振替を行う会計処理
- 3 費用を各純資産区分に計上し純資産の振替を行わない会計処理
- Ⅲ 各方法の特徴とメリット・デメリット
- 1 米国会計基準における純資産の振替と費用の計上区分をめぐる議論
- 2 費用を無拘束純資産に計上する根拠・純資産区分ごとに計上する根拠
- 3 どのような費用の表示が非営利組織の実態をより忠実に表現するか
- 4 拘束純資産の増加と非拘束純資産の増加の意義の違いと純資産の振替
- 5 非営利組織の事業活動の効率性や採算性の判断
- おわりに
Ⅰ 本稿の問題意識
本稿の考察対象は、活動計算書(正味財産増減計算書)における収益及び費用の区分表示と純資産(正味財産)の振替である。活動計算書における収益及び費用のフロー情報は、日本の公益法人会計基準等において、純資産の区分ごとに表示されている。そこで、収益や費用をどの純資産区分に計上するのか、また純資産区分間の振替が問題となる。非営利組織会計の純資産区分は会計基準によって多様であるが、米国の非営利組織会計基準や日本の公益法人会計基準では、純資産が寄付者等の使途の指定の有無に応じて区分されている。非営利組織は寄付等の対価性がない取引から多くの資源を得るが、受領した資源について寄付者等から使用時期や使用目的等の指定が付されていることが多く、この会計の扱いが問題となってきた。
非営利組織におけるフロー情報は、組織の活動を開示するうえで非常に重要な項目である。非営利組織会計における純資産の区分については、藤井(2005)等、多くの先行研究がある。一方、フローの区分や表示については、純資産区分と比較して、先行研究が少ない。そこで本稿では、フローの区分や表示に着目して、議論を進めていきたい。
正味財産は純資産、正味財産増減計算書は活動計算書と呼ばれることもある。本稿では、特定の会計基準を引用するときには各基準の用語を用いるが、特に断りのないときには「純資産」「活動計算書」という用語を用いることとする。純資産の区分は会計基準により異なるが、本稿ではフロー面での考察に焦点を当て、純資産は(寄付者等による使途の拘束がない)無拘束純資産と(寄付者等による使途の拘束がある)拘束純資産とに大別されることを前提として議論していく。
Ⅱ 費用の表示区分と純資産の振替の会計処理<
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