誰もができる寄付
「遺贈寄付」への第一歩

三浦美樹
(みうら・みき (一社)日本承継寄付協会 代表理事)

 

 昨今、寄付を受ける多くの団体の間で「遺贈寄付」への関心が高まっている。少子高齢化が進行する日本では、60歳以上の人が保有する金融資産の割合は2035年には7割以上に達するとされており、老老相続は相続の現場でも課題となっている。一方で、ソーシャルセクターの資金不足が恒常的に発生し、資金が社会に還元されていないのが現状である。
 遺贈寄付は老後の資金の心配のいらない「私にもできる社会貢献」として、選択した人には大変喜ばれているにも関わらず、多くの方は「人生の最後のお金の使い方は選べる」という方法を知らずに選択できていない。そして、「遺贈寄付は裕福な人がするもの」「遺言書に記載したからには遺贈寄付のために財産を必ず残さなければならない」といった誤解も存在する。
 そこで私たち日本承継寄付協会は、「遺贈寄付を文化にする」をミッションに、誰もが人生の集大成の社会貢献として、遺贈寄付を選択できる社会をつくるために活動している。多くの公益法人が時代の流れから遺贈寄付に注目し、受け入れたいと思いながらも法律手続が難しそう、税金について知らないとできないのではないかといった誤解や、ハードルが高いという声をよく耳にする。しかし、実務面では金銭の受入れだけであれば、通常の寄付と変わらない。不動産を受け入れる場合や、全財産寄付(包括遺贈)の場合は注意が必要だが、遺贈寄付を受け入れることについて必要以上に心配して、受入れを躊躇ちゅうちょするのは非常にもったいない。
 当協会は、全国で遺贈寄付の相談が受けられるように、相談できる人を増やす取組みとして承継寄付診断士講座を開催し、遺贈寄付を受ける団体の担当者にも受講いただいている。また、遺贈寄付に必要な遺言書作成にかかる専門家報酬を1 人あたり10万円助成する制度(フリーウィルズキャンペーン)を開催しており、非営利組織であれば登録などは不要で全ての団体に利用いただくことが可能だ。ぜひ、こうした取組みも活用してほしい。
 遺贈寄付はこれまで寄付と接点のなかった人も多く選択する寄付の方法である。遺贈寄付を選択した人の中には、「寄付はハードル高いと思っていたけど、亡くなった後であればお金の心配もいらないし、これなら私にもできる」と言って少額の遺贈寄付を始めた人や、遺贈寄付の検討から寄付先を知り、生前の寄付を始めた人も多くいる。まずは、遺贈寄付を受け入れていると、Webサイト等で伝えることから始めてみてはどうだろうか。

 

執筆者Profile
三浦美樹(みうら・みき)
(一社)日本承継寄付協会 代表理事。2019年に日本承継寄付協会を設立。遺贈寄付全国実態調査や遺贈寄付情報誌「えんギフト」を発行。英国発の遺言書作成報酬助成であるフリーウィルズキャンペーンの日本初開催をし、日本における遺贈寄付文化創造に尽力。また、2011年に司法書士事務所を開業し、相続専門の司法書士として、これまでに多くの相続相談を受け、多数の相続セミナーや相続専門誌を監修・執筆。

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