やる気のある多様な人々の参入が非営利組織を活発化させる

(かねこ・りょうた 早稲田大学商学学術院教授・公認会計士)
筆者が会計専門職を育成する会計大学院に着任して、2025年4月で2年目となった。これまで勤務した大学とは年齢層も指向も異なるが、やる気のある学生に支えられ、日々多くのことを学ばせていただいている。
私が公認会計士の受験勉強をしていた時には、非営利組織や公益法人に関して全く無知であったが、今日では非営利会計分野に興味を持つ学生も多い。日本の公認会計士試験には出題されず(米国の公認会計士試験では出題範囲に含まれる)、また朝1時間目にも関わらず、多くの学生が非営利会計の授業を履修している。授業では、学生の非営利組織での活動などの実体験も多く聞くことができている。
学生の興味関心の内容は、社会的企業に興味がある、本業の仕事の傍らプロボノ(職業上のスキルや経験を活かして社会的な課題解決に取り組むボランティア)として非営利組織に関わりたい、非営利組織の会計や税務の専門家になりたいなど、多様である。
今後、多様な形で非営利組織に関わる会計人が増えると、活動面でも会計面でも従来とは異なる考えが組織に持ち込まれ、従来の方針との間にハレーションを起こすこともあるかもしれない。しかし、中長期的には多様性が非営利組織やその会計の進化を促すと信じている。多様性というと、最近の米国のトランプ政権の文脈等でポジティブに捉えられてはいないが、営利を目的とせず刻々と変化する社会の多様なニーズに対応する必要性の高い非営利組織では、多様性が必須であろう。そして、多様な人々が非営利会計に関わりを持つことで、会計実務も会計基準もより洗練されていくだろう。
私が関わっている理事・監事など関係者の高齢化が進んでいる男性中心の組織でも、若い世代の参画なしには長期的な活動の継続や寄付の獲得ができないという危機意識を有し、男女ともに若く異分野での経験を有する人材を活用する動きが生じつつある。クラウドファンディングにも挑戦し、これまでと異なる層からの寄付を獲得している。一方で、長い間、同じ理事等のメンバーが継続し高齢化が進んでいる組織では、新たな人々が参加する心理的障壁が大きいことも事実で、世代交代が進みにくい。前例踏襲のため、長期的な活動の継続に赤信号が灯っている組織もある。
私は、非営利組織に関わる会計人を増やして中長期的に非営利組織の活動や会計の促進を支えるべく、会計大学院での教育に邁進していきたいと考えている。
専門は非営利組織会計・政府会計。公認会計士・米国公認会計士(USCPA;ワシントン州)。(公社)非営利法人研究学会理事、内閣府公益認定等委員会会計に関する研究会主査、東京都公益認定等審議会委員等を歴任。著書に『公益法人会計の教科書 中級』(単著、全国公益法人協会、2022年)、『会計学の基本』(共著、中央経済社、2024年)ほか。論文等多数。
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