新たな財務規律に対応した収支予算書の作成実務

石川広紀
(いしかわ・ひろき 税理士・本誌編集委員)
 

Ⅰ はじめに

 令和7年4月に施行された改正公益認定法により、公益法人の財務規律は現在、大きな転換期にあります。従来の財務三基準が、それぞれ「中期的収支均衡」「公益目的事業比率50%以上」「使途不特定財産額の保有制限」へと再編され、公益法人の財務運営に柔軟性と事前の見通しがもたらされることになりました。この背景には、従来の制度が短期的な収支バランスの維持を重視するあまり、長期的な事業計画や計画的な資金の使い方を制約してきたという課題があります。
 制度改正において、予算策定の実務は重要な意味を持ちます。予算は単なる数値計画ではなく、法人の事業戦略を財務面から具体化し、新たな財務規律への適合性を事前に検証する重要なツールとなりました。本稿では、新たな財務規律が予算策定実務に与える具体的な影響について解説いたします。 

Ⅱ 中期的収支均衡を意識した予算策定

1 5年間の収支見通し

 従来の収支相償では、公益目的事業の収入がその実施に要する適正な費用を償う額を超えないことが求められていました。この収支相償は、公益法人が利益を内部に蓄積せず、公益目的事業に充てられるべき財源を最大限活用することを目的としていたものの、実務上は様々な弊害を生んでいました。
 新制度における「中期的収支均衡」は、認定法施行規則15条により「5 年間」と明確に定義され、この期間内で収支の均衡を図ることが求められます。これは、公益法人が短期的な収支の変動に過度にとらわれることなく、中長期的な視点で事業運営を行えるようにするための重要な変更です。
 予算策定時には、当該事業年度だけでなく、今後5 年間の収支見通しを立てることが実務上求められます。具体的には、過去

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