非営利法人制度を原点にかえって考える
(いさ・あつし 久留米大学経済学部教授・経済学部長
(公社)非営利法人研究学会副会長)
私は元々、NPO経営論を専門分野としているが、渋沢栄一に関する書籍を読み終えた後、日本の公益法人制度の制定理由とその経緯が気になり、少し調べてみた。
明治維新後、政府は、幕末に欧米列強との間で締結された不平等条約を改正し、治外法権の撤廃と関税自主権の回復を目指していた。そのためには、欧米列強と同様の法律や制度を整えた文明国として認められる必要があった。それは、例えば、トラブルに巻き込まれた欧米人が法律に基づいて出身国と同様に保護されるようにするためである。そこで、政府は、欧州において法制の模範とされてきたフランス法を参考にして近代的民法典の編纂を進めるため、ボアソナードらを招聘した。
1890年、政府法律顧問のボアソナードを中心に起草された民法典が公布されたが、フランス民法典の影響が強いことから民法典論争が起こった。これは、日本の国情に合致しない面があるから施行を延期すべしとする法典延期派と、不平等条約の改正には民法・商法の制定が急を要するのだから断行すべしとする法典断行派との間の論争であった。山県有朋ら政治家も巻き込んだ大論争の末、1892年、施行延期を提案する法案が可決された。翌年、法典調査会が設置され、延期派と断行派を統合するため、穂積陳重(延期派)・富井政章(延期派)・梅謙次郎(断行派)の3名が起草委員となって民法典の編纂が始まった。1896年に第一編総則、第二編物権、第三編債権が成立、その2年後、第四編親族と第五編相続の成立をもって民法典が施行された。
法典調査会による審議の過程で「民法修正案(前三編)の理由書」が示されたが、その中で「第二章 法人」を設けるのは、「公共心ノ発達及ヒ経済上ノ進歩」によって法人設立の必要性が増しており、諸外国では「法人ニ関スル通則」をまとめて民法に規定していることによるとしている。そして、同章「第一節 法人の設立」34条に公益社団・財団について規定し、諸外国の法人設立に関する法制度は概ね、国長特許主義、法律特許主義、準則主義、自由設立主義の4つに分類できるが、国長特許主義と自由設立主義には問題があるため、「今姑ク」準則主義と特許主義の長所を併せ持った「許可」とすることとした。以後110年間、この制度が継続されたのである。
翻って、現在の非営利法人に関する法制度は、複雑で活用し難いものになってはいないだろうか。諸外国の法制度に学びつつ、温故知新を旨として非営利法人全般の制度設計を考えてみるというのは、いかがであろうか。
1962年生まれ。実践経営学会理事、(特活)筑後川流域連携倶楽部理事長、(公財)佐賀未来創造基金評議員、(公財)ちくご川コミュニティ財団評議員、大牟田市協働のまちづくり推進委員会委員長、久留米広域連携中枢都市圏ビジョン懇談会座長他。元福岡県公益認定等審議会委員、元佐賀県公益認定等審議会委員。
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