寄附金の税額控除制度に係る証明獲得マニュアル

上松公雄
(うえまつ・きみお 税理士)
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目  次

いま、寄附を巡って様々な法人が各々の強みを活かしてアピールしている。この厳しい資金獲得競争において、法人が上手に利用したい制度とは? マニュアルで解説する。

寄附金の税額控除制度とは

寄附金の税額控除制度(措法41の18の3)は、平成23年度税制改正において創設された。
すなわち、「新しい公共」によって支え合う社会の実現に向けて、市民が参画する様々な「新しい公共」の担い手を支える環境を税制面から支援するため、草の根の寄附を促進するために創設されたものである(「改正税法のすべて〔平成23年度版〕」230頁)。
 
なお、「新しい公共」とは、人々の支え合いと活気のある社会をつくることに向けた「さまざまな当事者の自発的な協働の場」であるとされている(「『新しい公共』宣言」〔平成22年6月4日「新しい公共」円卓会議資料〕)。
当初、この「新しい公共」の具体的な担い手としては、NPO法人が想定されていたところであるが(注1)、公益社団法人及び公益財団法人についても、この「新しい公共」の担い手として期待されることから、寄附金の税額控除制度が整備されたという経緯が存する。

厳しい資金獲得競争の状況

ところで、現状においては、この「新しい公共」の担い手が、その活動資金を広く市民からの寄附に期待することは容易ならざる状況にあるものと思われる。
すなわち、現状においては「新しい公共」の担い手同士を含めて、他の法人及び法人類型(営利法人を含む。)との資金獲得競争が激化している。
 
そもそも寄附とは、見返りのない対価性のない資金の拠出を意味する。
したがって、寄附金を募るに際しては、その事業及び活動についての趣意や趣旨について資金提供者(潜在的な者を含む。以下同じ。)の理解が得られるように努め、かつまた、実際に、魅力ある事業及び活動を推進する必要があり、これ以外に方策はないものと考える。
 
これに対して、例えば、地方自治体においては、いわゆる「ふるさと納税」の募金に際して、寄附者に対して地域の特産品を進呈するなどの特典を付与することが容認されており、これに係る情報誌が出版されるなど、広く世間の関心、注目を集めている。
また、各種の法人あるいは団体などにおいては、その活動資金の募集に当たって、クラウドファンディングあるいはソーシャルファンディングの手法を利用する例が増えている。クラウドファンディングの場合には、まず、資金提供者において、税法上の寄附金に対する優遇措置の適用は受けられないが、(制約のない)特典の付与によって、この点は補われる傾向が認められる。
 
また、資金提供を受ける側の法人等が収益事業課税となる公益社団法人及び公益財団法人や非営利型法人に該当しない場合には、その提供を受けた資金は、受贈益として課税対象となるが、提供を受けた資金を活動費用として受領した事業年度内に費消してしまえば、結局のところ、所得金額は発生せず、法人税の課税の問題も生じないこととなる。
資金提供者における資金力には自ずと限界があるところであり、当然、その獲得競争は激しいものとなる。
 
繰り返しになるが、この激しい資金獲得競争において、法人自体と、法人の事業及び活動の魅力を訴えること以外に方策のない公益社団法人及び公益財団法人は、特に、「ふるさと納税」と比べて、著しく不利な状況に置かれていることは明らかである(注2)。
それゆえに、公益社団法人及び公益財団法人が、行政庁による証明を受け、寄附金の税額控除の対象法人となって、寄附者に対して、寄附金の優遇措置のメニューをすべて提示できるようになることは、激しい資金獲得競争に臨むに当たっての必須の条件であると考える。
 
本稿は、公益社団法人及び公益財団法人が、寄附金の税額控除に係る証明の申請に際して要点となる事項について、次頁より始まるマニュアル形式で整理したものである。
本稿とともに各種の手引きをご参照いただくことで、寄附金の税額控除に係る証明の申請に際して不明な点を減少あるいは解消するための一助となれば幸いである。
 
[注] (注1)認定基準の緩和及び仮認定制度の導入が図られた。 (注2)「ふるさと納税」については、平成27年度改正により、地方税における特例控除額の控除限度額を、個人住民税所得割額の2割(改正前1割)に引き上げることとされました(適用は、平成28年度分以後の個人住民税とされています)。   また、主として、確定申告不要な給与所得者等を対象として「ふるさと納税ワンストップ特例制度」が創設され、確定申告を行わない給与所得者等は、寄附を行う際、個人住民税課税市区町村に対する寄附の控除申請を寄附先の都道府県又は市区町村が寄附者に代わって行うことを要請できることとされました(平成27年4月1日以後に行われる寄附について適用されます)。  

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寄附金の税額控除制度に係る証明獲得マニュアル

 

Ⅰ 前提事項

1 寄附金控除の適用対象となる寄附金
 寄附金控除(所法78②

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