高まる法人の労災リスクと業務災害保険が果たす役割

小菅光浩
(こすげ・みつひろ 東京海上日動火災保険株式会社)

はじめに

近年、職場でのいじめやハラスメントによる精神疾患(メンタルヘルス疾患)や過重労働による脳疾患・心疾患等のメンタルヘルス不調者は急増しており、中には職員やその遺族から法人に対し労災訴訟を提起され、法人としては高額な損害賠償金を負担するケースがあります。
こうした、メンタルヘルス不調者の増加を背景に、国としては労働安全衛生法を改正しており、2015年12月から従業員50人以上の事業場を対象に年に1回のストレスチェックを義務化するなど、法人のメンタルヘルス対策の強化が求められています。また、(公財)あいちコミュニティ財団のようにパワハラやセクハラ、不当解雇といった労働紛争で法人又は役員が職員から慰謝料などを請求されるケースも増えています。
こうした環境の下、法人としては、これまでの就業中のケガはもちろん、過重労働やメンタルヘルスに起因する労働災害への備え、また、パワハラ・セクハラをはじめとする労務トラブルへの備えに対するニーズが高くなっています。
そこで本稿では、近年の労災リスクや労務トラブル及び「備え」としてのひとつである全国公益法人協会提供の“業務災害保険”を例にその概要・役割について説明します。

Ⅰ 法人を取り巻く労災環境の変化

精神疾患(メンタルヘルス疾患)、脳疾患・心疾患等の増加

労災死傷者は減少傾向でも、職場でのいじめやハラスメント、過重労働などにより精神疾患(メンタルヘルス疾患)、脳疾患・心疾患等の労災支給決定件数は増加しています(下記図1及び次頁表1参照)。また、過重労働などによる労災訴訟に発展し、法人が高額な損害賠償金を負担するケースもあります。<

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