「スポットワーク」活用術
―法的留意点と実務対応のポイント―
(もり・かつよし 公認会計士・税理士)
- CATEGORY
- 労務
- 対象法人格
- 公益法人・一般法人
Ⅰ スポットワークが「令和の働き方」に
1 スポットワークの現状と課題
近年、スマートフォンのアプリを介して短時間・単発で働く「スポットワーク」が急速に普及しています。履歴書・面接が不要、即日振込み(仲介事業者による立替払い)も一般的で、働き手には「すぐに収入が得られる」「空き時間を有効活用できる」という利点があり、使用者側には「繁忙期に柔軟なシフト運用が可能」「短時間労働力を即日確保できる」といったメリットがあります。スポットワークは、デジタル社会に生まれた「令和の新しい働き方」です。法人の現場でも、イベント受付や展示補助、セミナー運営補助、資料作成支援などで活用が広がっています。
一方、アプリ経由で超短期であるがゆえに不安定な雇用に結びつくという運用上の特性から、「仕事内容が求人と異なる」「着替えや待機時間が労働時間に算入されない」「評価が一方的に低く付けられ、次回以降の就労に影響する」等のトラブルが散見されています。公益法人は社会的信頼を基盤とする事業体であるため、法令違反はもちろん、軽微なトラブルでも信用失墜に直結するリスクがあります。以下では、厚生労働省のリーフレット(注)や(一社)スポットワーク協会の資料を踏まえ、法人がスポットワークを適法・適正かつ円滑に導入・運用するための要点を、実務手順とチェック項目まで含めて整理します。
2 定義と契約形態の整理
スポットワークは、デジタルプラットフォームを通じた短時間・単発の就労で、労働契約に基づく「雇用型」が中心です。業務委託契約(非雇用型)も存在しますが、法人における典型的な就労、例えば現場責任者の指示を受ける、就業場所・時間の拘束がある、出退勤時間が管理される(QR打刻等)場合は、労働契約に該当します。
したがって、求人設計・採用フロー・就業管理は「雇用型」を前提に構築しましょう。
⑴ 誰が雇用主かを明確化
マッチングを担うスポットワーク仲介事業者は雇用主ではありません。労働契約の当事者は法人とスポットワーカー本人です【図表1】。
したがって、労働基準法等の遵守義務、賃金・安全衛生・ハラスメント対応等の責任は法人側に生じます。
【図表1:スポットワークにおける当事者の関係性】
⑵ 日雇い派遣の原則禁止
日々または30日以内の期間で雇用する労働者を派遣形態で受け入れる「日雇い派遣」は原則禁止です(例外は、60歳以上・昼間学生・生業収入500万円以上・世帯年収500万円以上、ソフトウェア開発や通訳など一部の業務)。法人でのスポットワークは、人材派遣ではなく、直接雇用を前提に設計するのが望ましいです。
Ⅱ スポットワークの使いどころ
スポットワークには、労働者側は都合に合わせて働くことができる利便性があり、時間や場所を自由に選べることや経験を就労に活用できるといったメリットがあります。使用者側のメリットとしては、人手不足の中、スポットワーカーを繁忙時間帯に柔軟にシフトへ組み入れることが可能となります。
しかし、スポットワークは、労働者、使用者、仲介事業者の三者がプラットフォームを介して複雑に関係し合っていること、超短期の雇用であること、アプリ経由のマッチングという特有の運用などから、次のような労務トラブルが生じていると指摘されています。
【労務トラブルのケース】
また、法人がスポットワークを利用するメリットとリスクを整理すると次の通りです。
【スポットワークを利用するメリットとリスク】
〈メリット〉
〈リスク〉
Ⅲ キャンセルをめぐる原則
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