「スポットワーク」活用術
―法的留意点と実務対応のポイント―

森 克義
(もり・かつよし 公認会計士・税理士)

 

Summary
「スポットワーク」はアプリを介した単発の働き方であり、法人の行事運営等においても今後の活用の広がりが見込まれる。留意すべきは、仲介事業者は雇用主ではなく、法人とスポットワーカー間の直接雇用である点だ。労働契約は応募完了時に成立するため、安易なキャンセルは賃金または休業手当等の支払いといった法的リスクを伴う。導入実務では、労働条件の明示や、着替えや待機時間を含む適切な時間把握、安全教育など「7つの準備」の徹底が不可欠である。適切な管理を通じて法人の社会的信頼を維持しつつ、柔軟な人手不足対応や将来的な人材確保へと繋げることが肝要だ。

 

Ⅰ スポットワークが「令和の働き方」に

1 スポットワークの現状と課題

 近年、スマートフォンのアプリを介して短時間・単発で働く「スポットワーク」が急速に普及しています。履歴書・面接が不要、即日振込み(仲介事業者による立替払い)も一般的で、働き手には「すぐに収入が得られる」「空き時間を有効活用できる」という利点があり、使用者側には「繁忙期に柔軟なシフト運用が可能」「短時間労働力を即日確保できる」といったメリットがあります。スポットワークは、デジタル社会に生まれた「令和の新しい働き方」です。法人の現場でも、イベント受付や展示補助、セミナー運営補助、資料作成支援などで活用が広がっています。
 一方、アプリ経由で超短期であるがゆえに不安定な雇用に結びつくという運用上の特性から、「仕事内容が求人と異なる」「着替えや待機時間が労働時間に算入されない」「評価が一方的に低く付けられ、次回以降の就労に影響する」等のトラブルが散見されています。公益法人は社会的信頼を基盤とする事業体であるため、法令違反はもちろん、軽微なトラブルでも信用失墜に直結するリスクがあります。以下では、厚生労働省のリーフレット(注)や(一社)スポットワーク協会の資料を踏まえ、法人がスポットワークを適法・適正かつ円滑に導入・運用するための要点を、実務手順とチェック項目まで含めて整理します。

 

2 定義と契約形態の整理

 スポットワークは、デジタルプラットフォームを通じた短時間・単発の就労で、労働契約に基づく「雇用型」が中心です。業務委託契約(非雇用型)も存在しますが、法人における典型的な就労、例えば現場責任者の指示を受ける、就業場所・時間の拘束がある、出退勤時間が管理される(QR打刻等)場合は、労働契約に該当します。
 したがって、求人設計・採用フロー・就業管理は「雇用型」を前提に構築しましょう。

 

⑴ 誰が雇用主かを明確化

 マッチングを担うスポットワーク仲介事業者は雇用主ではありません。労働契約の当事者は法人とスポットワーカー本人です【図表1】
 したがって、労働基準法等の遵守義務、賃金・安全衛生・ハラスメント対応等の責任は法人側に生じます。

 

【図表1:スポットワークにおける当事者の関係性】

出典:厚生労働省リーフレット「スポットワーク」の労務管理を基に筆者作成

 

⑵ 日雇い派遣の原則禁止

 日々または30日以内の期間で雇用する労働者を派遣形態で受け入れる「日雇い派遣」は原則禁止です(例外は、60歳以上・昼間学生・生業収入500万円以上・世帯年収500万円以上、ソフトウェア開発や通訳など一部の業務)。法人でのスポットワークは、人材派遣ではなく、直接雇用を前提に設計するのが望ましいです。

 

Ⅱ スポットワークの使いどころ

 スポットワークには、労働者側は都合に合わせて働くことができる利便性があり、時間や場所を自由に選べることや経験を就労に活用できるといったメリットがあります。使用者側のメリットとしては、人手不足の中、スポットワーカーを繁忙時間帯に柔軟にシフトへ組み入れることが可能となります。
 しかし、スポットワークは、労働者、使用者、仲介事業者の三者がプラットフォームを介して複雑に関係し合っていること、超短期の雇用であること、アプリ経由のマッチングという特有の運用などから、次のような労務トラブルが生じていると指摘されています。

 

【労務トラブルのケース】

・ 働き先から突然仕事がキャンセルされた
・ トイレ掃除など、求人内容と異なる仕事をすることを要求された
・ 着替え時間の賃金が出ない
・ 予定より早く終わった場合、賃金が減らされた
・ QRコード等をタッチする前後にも就労を命じられた
・ 安全教育を受けずに労災に巻き込まれる
・ アプリから一方的に不当な評価を受けた
・ 仕事先に行く途中で災害に遭ったが、通勤災害に当たらないと言われた

 また、法人がスポットワークを利用するメリットとリスクを整理すると次の通りです。

 

【スポットワークを利用するメリットとリスク】

〈メリット〉

繁閑差への柔軟対応:催事やイベント、キャンペーンなど短期の人員需要に即応できる
専門スキルの限定活用:IT、翻訳、広報などの特定技能を必要な時間帯のみ活用できる
正社員化のきっかけづくり:単発就労を通じて適性を見極め、長期雇用に切替える道筋を確保できる

 

〈リスク〉

・ 「法人―労働者―仲介事業者」の三者が重層的に関与し、運用が複雑
・ 就労前後の準備、待機、評価など、アプリ特有の工程でトラブルが発生しやすい
・ 事故、ハラスメント、賃金不払い等は信用リスクに直結するため、予防策の構築が不可欠
・ 教育に必要な工数増加や現場マネジメントの複雑化

 

Ⅲ キャンセルをめぐる原則

無料登録でお読みいただけます。

月刊公益オンラインとは

財団法人・社団法人に特化した支援プログラム"シェアコモン200"の利用法人様向け実務専門誌『月刊公益』の記事を中心に、公益・一般法人に関するニュースや専門家による解説などをお届けする情報配信プラットフォームです。

詳しくはこちら
専門誌

無料登録のご案内

「月刊公益オンライン」に無料登録すると、登録の方限定の記事をご覧いただけるなど、実務に役立つさまざまな特典をご用意しております。

特典1

限定記事や
実務カレンダーが読めます!

「月刊公益オンライン」の無料登録の方限定記事や各月の事務局の作業内容がつかめる「実務カレンダー」をご覧いただけます。

特典2

最新の法改正に関する
セミナーなどの情報を受け取れます!

公益認定法改正など、最新の法改正とその対応に関するセミナーをはじめ、公益・一般法人の運営に必要な知識を深めることができる講習会の情報をお受け取りいただけます。

特典3

よくあるご相談内容をピックアップして
メールにてお届けいたします!

よくあるご相談内容に弁護士や税理士などの専門家が回答するQ&A集を、メールにてお受け取りいただけます。日々の業務のお困りごとや疑問解決にお役立てください。

特典4

公益法人・一般法人に特化した専門書籍を
10%オフで購入できます!

月刊公益オンラインを運営する公益法人協会では、社団・財団法人のための出版物を多数発行しております。無料登録いただいた方は、通常価格から10%割引でご購入いただけます。