事務局長の役割と責任

渋谷幸夫(しぶや・ゆきお)
全国公益法人協会特別顧問。神奈川県出納局長を経て、(財)神奈川県企業庁サービス協会理事長に就任。
総務省「公益法人の効率的・自律的な事業運営の在り方等に関する研究会」委員等を歴任。
 
これまで何号かに渡り、代表理事や職員の役割、その立場についてていねいにみてきました。代表理事は会社法上の代表取締役と似た立場・役割であり、職員は従業員としてみることで、よく理解できたという方も多いのではないでしょうか。しかし財団・社団では、特徴的な役割が存在します。それが事務局長というものです。
理事が取締役、職員が従業員としてみると、事務局長は会社法上の経営陣的な立場に近いと考えることもできますが、その性格はそれとは少し違っています。そこで今回も事務局長の役割について、理事や代表理事と比較しながら財団・社団法人の諸問題に精通している渋谷氏に、改めてその役割と責任について伺いました。
(聞き手・構成 斉藤永幸) 

Ⅰ 事務局長の役割とは

ーーまずは事務局長とはどのような地位なのでしょうか。  渋谷 事務局長というのは、わかりやすく言えば職員の中で一番地位が高い者。いわば統括責任者です。
理事などの役員ではないものの、ただの職員ではありません。一般法人法第90条の 4 項では「理事会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を理事に委任することができない。」ものとして6つの項目をあげ、その3として「重要な使用人の選任及び解任」をあげています。この重要な使用人の代表的なものが、事務局長なのです。
つまり事務局長の就任には理事会の決議が必要であり、代表理事などの一存で決めることができません。それだけ重要なポジションと言えます。 ーーではその事務局長とはどのような役割を担っているのでしょうか? 渋谷 そもそも事務局長については、定款で定められている団体と、定款で定められていない団体があります。ただ、定款で定められていない場合でも、理事会の承認のみで設置することができます。
これは法人の事業規模によって違うことも多いですね。小さな法人の場合でも事務局長を置いている団体もありますが、そもそも職員が数人しかいない場合は担当する理事が直接管理するだけで足りる、ということもあります。その場合は改めて事務局長を置かなくてもうまく事業を回すことができるでしょう。
しかし、規模の大きな法人の場合は、それではうまく組織を回すことができません。事業部制などを採用しているところもあり、そうした法人では複数の事業ごとに部署があるため、組織全体を統括する立場が必要となってくるのです。
このように法人の規模や組織の仕組みによっても多少の違いはあるのですが、一般的には統括責任者、といった役割である、ということができるでしょう。 ーー事務局長が統括責任者、ということは幅広い責任を負う立場、ということでしょうか。 渋谷 まず注目しなければいけないのが、統括責任者といってもそれ自体はあくまでも使用人、という立場です。これは後でも説明しますが、役員を兼任するとまた違ってきますが、法人とはあくまでも雇用関係なのです。理事などの役員は委任関係であり、違った立場なのです。以前の話でもあったように、役員は善管注意義務を負っているのに対し、事務局長の義務は雇用関係、つまり就業規則によって定めることになります。
つまり役員は広範な義務を負うのに対し、事務局長は統括責任者という立場ではありますが、あくまでも雇用関係であって事前に想定された就業規則に則った責任のみを負う、ということになります。 ーーでは不祥事などが起きた場合、どこまで事務局長が責任を負わなければならないのでしょうか。 渋谷 それは「誰が」不祥事を起こしたか、によって大きく変わってきます。例えば職員が不祥事を起こした場合です。その場合は組織全体を統括する責任が事務局長にあるため、どの事業部であっても、直接不祥事とは関係なくても、統括的な責任を負う必要がある、という場合が出てきます。これはいわゆる「管理不行き届き」ということです。
しかし、理事が不祥事を起こした場合は、状況が変わってきます。事務局長が理事を兼任していなければ、事務局長はあくまでも法人と雇用関係なので、理事の不祥事については事務局長の責任の範囲外、ということになっ

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