「みなし公務員」と法人の職務倫理
─受託収賄事件から学ぶ職務上の罪と罰─
2024年04月14日

出口正之
(でぐち・まさゆき 国立民族学博物館名誉教授・本誌編集委員長)
(でぐち・まさゆき 国立民族学博物館名誉教授・本誌編集委員長)
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目 次
Ⅰ はじめに
(公財)東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(以下、組織委員会という。)の理事(当時)が、およそ1億9,800万円の賄賂を受けとったとして受託収賄の罪に問われた事件は、当該理事が「みなし公務員」であったか否かが大きな焦点として報道された。また、理事の中には「みなし公務員」であることについて十分な知識と認識がなかったとういう報道もなされた。本誌読者の中にも「みなし公務員」でありながら「みなし公務員」であることを自覚していなかったり、その意味を十分に理解していなかったりする方も少なくないであろう。
実は公務員並みではないものの、法人法にも不正な請託を受けた収賄は公益・一般法人の役員等に重い刑罰が科せられる規定がある。そこで、法人の職務倫理に関わる罪と罰について、本稿で解説していきたい。
Ⅱ 刑法と法人法の収賄罪
刑法では、公務員の収賄について「公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役に処する。この場合において、請託を受けたときは、7年以下の懲役に処する」(刑法197条1項)と規定され、前段の部分は「単純収賄罪」、後段の部分が「受託収賄罪」と呼ばれている【図表】。なお、請託とは、公務員に対し、一定の職務行為を行うように依頼することを意味する。「みなし公務員」は、この規定が適用される。他方で、法人法でも、理事・監事・評議員等が「不正の請託を受けて財産上の利益を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金に処する」(法人法337条1項)と罰則規定がある。「単純収賄罪」については規定がなく、受託収賄については「不正の請託」
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