【column】外部監事さがしの憂鬱
—公益認定法改正への対応—
(くわはた・なおと 全国公益法人協会 専務理事)
認定法改正による外部監事の義務化
来年4月から改正公益認定法が施行されることにより、公益法人に対して外部監事の設置が義務付けられることとなった。外部理事のような規模の除外規定はない(※1)。この新たな規定によって多くの法人が外部監事探しに追われることになるだろう。
外部監事とは、法人の経営に関与しない第三者が法人の活動を監視する役割を担うものである。具体的には、法人が法令や定款に従って適正に運営されているかを確認し、必要に応じて改善を促すことで、法人の透明性や信頼性を保つ役割を果たす。このような役割を果たすためには、外部監事には高度な専門知識と経験が求められる。特に、法律や会計の知識に精通し、かつ法人運営に関する独立した視点を持つことが求められる。
会員は外部監事になれない
しかしながら、このような要件を満たす外部監事を見つけることは、容易なことではない。とくに公益社団法人の場合、構成員である社員(会員)は外部監事になることができないため、法人内部から選出することができない。このため、外部から適任者を探す必要があり、これが法人にとって大きな負担となるだろう。外部監事には理事会の決議の省略を拒否する権限があるなど非常に責任が重く、また報酬が必ずしも高いわけではないため、そのなり手を探すのは一層困難である。加えて公益法人でよく見かける理事を退任後、監事に横すべりする人事は、外部監事とはならないため注意が必要だ。
理事との利害関係があってもいけない
さらに、外部監事の独立性を確保するために、理事は監事と特別利害関係があってはならないという厳しい要件も新たに課されている(※2)。この要件は、外部監事の公正性を保つために必要であるが、一方で候補者を大幅に絞り込まれる要因となっている。そのため、とくに地方の小規模な公益法人にとっては、外部監事を確保することが非常に難しくなることが予想される。
外部監事の確保のために
このような状況を打開するために内閣府や都道府県は、弁護士会等の士業団体などと協力し、外部監事の担い手を発掘することが求められる。そのためにも公益法人における外部監事が果たす役割の理解を図る地道な周知活動が必要だろう。
外部監事探しは、多くの公益法人にとって避けては通れない課題である。しかし、外部監事の設置は、単なる法的義務の履行にとどまらず、自ら法人の透明性や信頼性を高めるための重要な施策であることを認識しなければならない。法人としては、この課題に真摯に向き合い、外部監事の確保に向けた取組みを早期に開始することが求められる。
注記 本記事は令和6年8月18日現在の法令に基づくものとなっている。
監事(監事が二人以上ある場合にあっては監事のうち一人以上)が、その就任の前十年間当該法人又はその子法人の理事又は使用人であったことがない者その他これに準ずるものとして内閣府令で定める者であること。
各理事について、監事(監事が二人以上ある場合にあっては、各監事)と特別利害関係を有しないものであること。
全国公益法人協会 専務理事。昭和50年生まれ、早稲田大学社会科学部中退。在学中に出版社に就職し、平成14年に全国公益法人協会編集局に入職。初代編集局長の川崎貴嗣に師事し、月刊誌『月刊公益法人』『非営利法人』編集長、『公益・一般法人』創刊編集長等を経て現職。(公社)非営利法人研究学会では事務局長として公益認定取得に従事。編著に『非営利用語辞典』、編者として『公益法人小六法』シリーズ他担当編集書籍多数。