第1回 永島 徳大 先生
先生は当社の相談顧問として多くの法人のご相談に対応するほか、本誌『月刊公益』の編集委員も務めます。その歩みと熱い思いを、当社専務取締役の桑波田直人が伺いました。

三代にわたる絆 ― 永島家と全国公益法人協会とのつながり
━━━初めて正式に永島先生をご紹介いただいたのは、お父様の公孝先生から「息子が会計士試験に合格したので、公益法人の分野で指導してほしい」と、お電話をいただいたときでした。
合格の報告を父からしていたのは初耳でした。公孝先生にはそんな想いがあったんですね。
━━━その際、お名前の「徳」は、お祖父様・徳造先生から取られたと伺いました。徳造先生には当社の創業期に大変お世話になり、ご縁を感じます。(徳造先生の書籍を手に)この本はご覧になったことはございますか?
この書籍、祖父が執筆したものなんですね。すごいなぁ。実は過去の公益法人制度を学ぶために、祖父の時代の書籍を読んでいますが、この本も歴史を感じますね。
━━━印象に残っているお祖父様の姿などありますか?
机に向かっている姿が強く印象に残っています。祖父の家が事務所を兼ねており、小学校からも近かったため、よく遊びに行っていました。そこには事務員さん、叔父の公朗先生、父の公孝先生もいて、いつも賑やかでしたね。
━━━あの目白の事務所ですね。私も毎年、お正月のご挨拶に伺っていました。

ラクロスが育んだ「なぜ?」と考える力
━━━中学校から大学まで慶應に通われていたそうですが、学生時代は何に熱中されていましたか?
高校からラクロス部に所属し、大学でも続けました。自由な雰囲気の中、ラクロスを中心に学生生活を送っていました。
━━━学生時代から会計士を目指していたのですか?
高校生の時から漠然と「数字に関係した仕事が合っているかも」と思っていました。大学2年のときに公認会計士を目指すことを決めまして、部活を辞めて勉強に専念するかを悩み、父に相談したところ「部活をやりきりなさい」と言ってもらい、大学4年の部活を引退してから、会計士の予備校に申し込み、勉強を始めました。
━━━大学で法学部をご選択されたのは、司法試験を目指されたお父様の影響でしょうか?
実はそうではなくて(笑)。大学生のラクロスの先輩に学部選択のアドバイスをもらったのがきっかけで、法学部のカリキュラムは3年間で卒業に必要な単位のほとんどを取ることができたことが選択の理由です。おかげで大学4年は部活に専念できたので、部活ありきの学部選択でしたね。
━━━それは意外です(笑)。でもラクロスに熱中された日々が、今にもつながっていそうですね。今のお仕事に生きていると感じることはありますか?
はい、大いにあります。ラクロスは日本に入って歴史の浅い競技だったため、当時は専属コーチなどもおらず、高校・大学ともに練習メニューや戦術を自分たちで考える必要がありました。高校時代はOBから「なぜこの練習をやるのか」と徹底的に問い詰められたことで、常に目的を意識して取り組む姿勢が身につきました。この「なぜやるのか」を考える習慣が、今の仕事においても役立っていると感じます。
━━━スポーツの世界では「とにかくやれ」と言われがちですが、歴史の浅い競技だからこそ、自律的に考える文化があったのですね。
おっしゃる通りです。野球やサッカーと違って前例が少なく、決まった型がない分、自分で考えて答えを導き出す力が養われました。それが当たり前の環境でしたね。

外部としてチェックする立場から法人の内側へ
━━━大学卒業後に公認会計士の勉強を始められたとのことですが、現在に至るまで、どのようなお仕事に携わってこられましたか?
卒業して2年後の試験で合格し、その後は大手監査法人で主に企業会計の監査に携わっていました。当初は公益法人の仕事は少なく、現在、自分が公益法人の分野で働いていることに少し不思議に感じることもあります。その後、大手コンサルティング会社に転職し、経営課題の解決支援にも携わりました。
━━━コンサルティング会社への転職は、どのようなきっかけがあったのでしょう?
監査は「すでに行われた経理処理のチェック」が主な業務ですが、私はその前段階の「事業活動や意思決定においてどのように会計が使われるのか」を知りたいと思うようになったんです。コンサルティング会社では、上場企業の取締役会向けの資料作成なども経験しました。経営企画室の方と一緒に「どうすれば役員の方々に納得して意思決定をしてもらえるか」を考える日々でした。
━━━チェックする側から作る側、つまり法人の内側の目線を経験されたということですね。
はい。実際に法人側の立場に立つことで、見える景色が大きく変わりました。

世代を越えて引き継がれる公益への想い
━━━公益法人の世界に入ることになった経緯を教えていただけますか?
叔父の公朗先生が体調を崩したことがきっかけで、父の公孝先生から「少し話がある」と言われ、家業に入ることになりました。今では公益法人に対する思いも強くありますが、当時はまったく想像もしていませんでしたし、それまでに一度も強制されたことはありませんでした。
━━━そうだったのですね。現在の先生からは、初めから熱意をもって関わられたような印象を受けます。
初めて公益法人の仕事に関わったとき、実直な相談が多いのが印象的で、「困っているので、助けてほしい」という素直で誠実な姿勢を感じました。営利企業の監査でも、会社担当者との関係は良好でしたし、誠実な印象もありましたが、公益法人の方々はよりオープンで素直な印象を受けています。公益法人は法令や基準への意識が強く、ステークホルダーも多いため、専門家の存在が欠かせません。だからこそ、率直に相談してくださるのだと思います。その分、やりがいもありますし、責任も大きいですね。
━━━確かに、公益法人の担当者は真摯に相談される方が多いですね。現在は、どのようなご相談が多いのでしょうか?
最近は、法改正への対応、特に新公益法人会計基準に関する相談が多いです。全国に関係団体をもつ法人さんでは、自らがモデルケースとなって早期に移行をしたいという意向がありまして、その支援を行うこともあります。祖父の代から公益法人を強みとしているため、公益法人の関与先からの相談事例が多いことが我々の強みだと思います。そのような情報を通じて全国の法人さんにも貢献できればと考えています。また、日本公認会計士協会の活動では、「公益法人の現場をよく知る委員」として、その相談事項などの現場で起きている問題点や課題を発言して、共有するようにしています。

大切にする「横に寄り添う」姿勢
━━━ご相談を受ける際に、特に心がけていらっしゃることはありますか?
尊敬する先生のお言葉で「横に立ち、寄り添いなさい」というものを大切にしています。机を挟んで向かい合うのではなく、横に並んで、一緒に課題解決の方法を考えるという意味です。
やるべきことは分かっていても、考えるべき課題があって実行に移せないことも多い。そのときに「やってください」と突き放しても解決にはつながりません。一緒に考える姿勢が本当に大事だと感じています。
━━━相談を受ける側としては、「教えてあげる」という関係になってしまいがちですが、伴走するような感覚ですね。書籍には「こうあるべき」と書いてあっても、実際にはその法人の事情に合った「正しい方向に向けた道筋」を探さなくてはいけない。
おっしゃるとおりです。いくら解決策を提示しても、法人の実情がわからなければ、現実的な解決にはなりません。だからこそ、「横に寄り添う」ということがとても重要なのです。
━━━これまで多くの相談を受けられた中で、特に印象に残っているものや、やりがいを感じた瞬間はありますか?
経理経験の浅い方が、前任者から急きょ業務を引き継ぐことになり、決算を進めなければならなくなった法人で決算のサポートをした経験ですね。その方が初めて主体となって決算をまとめることになるので、逐一指示を出し、進捗とその都度できたものを確認してサポートを続けました。
最終的に「これを直せば完成です」とお伝えしたとき、その経理担当者が涙を流されたんです。その時は経理の方が普段から背負っている責任の重さを改めて感じる忘れられない経験になりました。
━━━それはとても印象深いエピソードですね。
その方の責任感の強さを感じるとともに、私たちが物理的に頻繁に伺えない中でも、経理の方と伴走して支えることができたと実感しました。その後に何でも相談していただける関係を築けたことは、大きなやりがいにつながっています。
大手監査法人にいた頃よりも、より「近い存在」としての信頼関係を感じられた瞬間でした。

━━━初めて正式に永島先生をご紹介いただいたのは、お父様の公孝先生から「息子が会計士試験に合格したので、公益法人の分野で指導してほしい」と、お電話をいただいたときでした。
中等部ではテニス部に所属していたのですが、高校でテニス部に入るには相当過酷な入部テストがあって、仲間とともに入部を見送ることにしました。当時の友人が先に「ラクロス部に入る」と言い出したので一緒に入部したのですが、彼は一番最初に辞めてしまって(笑)。私はそのまま続け、日本代表に選出され、大学の主将まで務めることになりました。彼は今でも「徳大をラクロス界に入れたのは俺の功績だ」と言っています(笑)。本当に、人生何があるか分かりませんね。
━━━休日はどのように過ごされていますか?
もっぱら子育てですね。なるべく平日に仕事を集中させて、休日は子どもと一緒に過ごす時間を大切にしています。毎週のように習い事やプール等へ連れて行って、「夜にぐっすり寝てもらうために、日中でいかに満足して疲れてもらうか(笑)」を考えながら休日も過ごしています。

情報提供はタイムリーに
━━━先生は『月刊公益』の編集委員としてもご活躍いただいていますが、編集委員として特に意識していることはありますか?
「その企画が読者にとってどのようなメッセージを与えるのか」という読者視点を大切にしています。例えば、掲載時期が読者のニーズに合っているか、タイムリーな情報発信となっているかなどですね。せっかく良い記事でも、発信のタイミングがずれてしまうと届きづらくなってしまいますので。特に法改正などはスピードが求められますから、迅速に情報をキャッチし、届けたいという思いは強いです。
━━━法改正の記事もご執筆いただきましたね。常に最前線の情報を提供してくださること、大変ありがたく思っております。公益法人と関わる中で感じる、社会的な意義や魅力についてもお聞かせいただけますか。
近年の公益法人制度改革を通じて、民間による公益活動を担う仕組みがより明確になりました。そうした中で、会計・税務の専門家として、求められるテーマや課題に対し、具体的な解決策を噛み砕いて提供することが私たちの役割だと考えています。
祖父の時代から比べると、公益法人の制度も環境も大きく変わりました。会計において、現在は予算準拠主義ではないものの、公益法人の財源を見れば予算の重要性が高いことは今現在も変わっていません。違いは、自らの経営判断とガバナンスをもって公益目的事業の活性化や制度遵守が求められている点です。今回の改革によって財務規律が柔軟化したことによる自由度が増したと同時に、ガバナンス構築にもより重点を入れる必要があります。法人ごとに独自の仕組みがあり、人も入れ替わるので、その法人にとっての今できる最適解を探すために、専門家としてその変化に伴走し、正確で新しい情報を発信することにやりがいを感じています。

「相談しやすい存在」であり続けるために
━━━今後、公益法人と関わる中で、挑戦してみたいテーマや分野はありますか?
私は公認会計士であり、税理士でもありますので、制度が変化するなかで、会計と税務は常に寄り添っていくものです。その時々に求められるテーマに対し、「じゃあ実際に何をすればいいのか?」というところまで噛み砕いて伝えていくことが、我々専門家に求められていることだと感じています。そのためにも、全国公益法人協会の相談事業やセミナー、『月刊公益』を通じて情報発信を続けていきたいです。
━━━「相談しやすい存在」であるために、普段から心がけていることや意識していることはありますか?
まだ若輩者ですので、「偉ぶらないこと」は常に意識しています。最初は「先生」と呼ばれることにも違和感がありましたが、今はその責任を受け止め、正しい方向に導く立場だという自覚も持っています。
ただ、相談者の方には距離を感じてほしくない。一歩踏み込んだ相談をしていただくためには、話しやすい雰囲気づくりが大切だと思っています。
━━━まさに「横に寄り添う」姿勢の表れですね。
ちなみに、小学校時代の同級生で眼鏡店を営んでいる友人に「丸いフレームの方が柔らかい印象になる」と勧められて、以前の四角いフレームから変えたんです。事務所のロゴの緑色も、その友人にデザインしてもらったものなんですよ。
会計は法人の“土台”を支えるものだと思っているので、ロゴには「自然」や「根を張る」といった意味合いも込めて「緑」を基調としたものにしています。
━━━眼鏡やロゴにもそんな思いがあったんですね。先生がいつも緑色のネクタイをされている理由も、そこにあったとは!
実はそうなんです(笑)。
━━━それでは最後に、読者の皆さまへメッセージをお願いいたします。
『月刊公益』は、公益法人に特化した情報発信を行っており、私も編集委員として日々学びながら企画に関わらせていただいています。ご寄稿くださる先生方が、その時々で必要な情報を丁寧に発信されていますので、一人でも多くの方にご覧いただきたいです。雑誌だけでは伝えきれない部分はセミナーや動画などのコンテンツで補完していますので、ぜひそういった他のツールも活用していただけたらうれしいです。
━━━本日はありがとうございました。
公認会計士・税理士。監査法人、経営コンサルを経て独立。全国公益法人協会相談室顧問、本誌編集委員。日本公認会計士協会非営利法人委員会専門委員、同東京会非営利法人委員会副委員長・調査研究小委員会委員長、慶應義塾大学非常勤講師を務める。
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