評議員への一律交通費、源泉徴収は本当に不要?

 

鷲澤克栄
(わしざわ・かつえ 全国公益法人協会 相談室職員/公認会計士)

 

質問

評議員への一律交通費、源泉徴収は本当に不要?

 当法人では、非常勤の評議員に対し、評議員会出席のたびに一律1万円を「交通費」として支給しています。報酬は支給していないため、源泉徴収は不要であり、消費税についても特に意識していません。この取扱いに問題はないでしょうか。

 

回答

そのままでは源泉漏れの恐れあり!実費精算が基本です

 役員や評議員に対する支給は、たとえ「交通費」という名称であっても、実際の交通費を超える部分があれば、実質的には「日当」または「報酬」として扱われることがあります。その場合、所得税上は「給与等」として源泉徴収の対象となります。一方、消費税においては、給与として整理される支給は課税対象外(不課税)となります。このように、同じ支給であっても、所得税(源泉徴収が必要か)と消費税(課税仕入れになるか)とでは、全く別の観点から確認する必要があります。

 

鷲澤さんの解説

役員・評議員への支給における所得税区分

 理事・監事に対する報酬は、法人の役員としての職務執行の対価であり、所得税上は原則として「給与所得」として取り扱われます。評議員についても、法人の意思決定機関の構成員として評議員会に出席し、議決等の職務を行う立場にあるため、その職務に対して支給される金銭は、講演料や原稿料のような外部委託の報酬とは区別して考える必要があります。
 そのため、役員・評議員への支給を、税理士、弁護士、講師等に対する「報酬・料金」と同じ感覚で処理することは適切ではありません。
 なお、公益法人等においては、勤務形態に応じた区分、算定方法、支給方法等を定めた「報酬等支給基準」を整備し、社員総会または評議員会等の承認、備置き、届出を行う必要がある点にも留意が必要です。

 

「交通費」名目の一律支給の問題点

 実務上よく見られるのが、非常勤の役員や評議員に対し、報酬は支払わず、「交通費」名目で一律の金額を支給する取扱いです。しかし、一律支給の場合、実際の移動にかかった費用と支給額が一致しているとは限りません。実際の交通費を超える部分は交通費ではなく、出席に対する「日当」または「報酬」としての性質を有すると評価される可能性が高くなります。
 そのため、税務調査において、当該支給額の全部または一部が「給与等」として認定され、源泉徴収漏れを指摘されるケースが後を絶ちません。名称が「車代」や「交通費」であること自体は、所得税法上の非課税の根拠にはならないのです。
 もっとも、非常勤の役員・評議員に対する交通費が、常に課税対象となるわけではありません。評議員会や理事会等への出席のために「通常必要であると認められる運賃、宿泊料等」に充てるものとして支給され、社会通念上合理的な範囲内にある場合には、その実費相当額について非課税として取り扱うことができます。
 したがって、実費精算による支給や、合理的な旅費規程に基づく支給であれば、非課税交通費として整理しやすくなります。これに対し、実際の交通費を確認しない一律支給は、この非課税の整理になじみにくいといえます。
 実務上は、「交通費」として支給している金額について、実費相当額とそれを超える部分とを明確に区分して確認することが重要です。もし実費相当額を超える部分がある場合には、その部分を日当または報酬(給与等)として源泉徴収を行う必要があります。

 

源泉徴収は10.21%一律で処理できるか

 非常勤の役員や評議員に対する支給について、「一律10.21%(復興特別所得税を含む)を差し引けば足りる」と誤解されているケースが散見されます。しかし、役員・評議員への支給が「給与等」に該当する場合、源泉徴収すべき税額は「給与所得の源泉徴収税額表」に基づいて判定しなければなりません。
 したがって、支給額や扶養控除等申告書の提出状況などによって税額は変わります。非常勤であることを理由に、安易に「報酬・料金」と同様に10.21%で処理すると、源泉徴収税額に不足が生じるおそれがあるため注意が必要です。

 

消費税における「給与等」と不課税処理

 ここで、所得税とは別に、消費税の視点も整理しておきましょう。
 消費税において、給与や賃金は「雇用またはこれに類する関係に基づく労務の対価」であり、事業者が事業として行う資産の譲渡等には当たらないため、課税の対象外(不課税)となります。
 したがって、役員・評議員への支給が所得税上「給与」として整理されるのであれば、消費税でも不課税という整理が出発点となります。この場合、当然ながら消費税の「課税仕入れ」には該当せず、仕入税額控除の対象にもなりません。
 所得税では源泉徴収の要否を、消費税では課税仕入れになるかを確認するという、両者の違いを混同しないことが実務上の大きなポイントです。

 

おつかれさまです、相談室です。
 役員・評議員への「交通費」は名称だけで非課税とは判断できず、実費を超える一律支給は給与等として源泉徴収が必要となる可能性があります。
 一方、消費税では給与扱いの支給は不課税となります。実務では実費精算の有無や規程類を併せて確認し、迷う場合は支給の根拠と実態を整理したうえで、税理士等の専門家に確認しましょう。

 

執筆者Profile
鷲澤克栄(わしざわ・かつえ 全国公益法人協会 相談室職員/公認会計士)

国税専門官としての実地調査、監査法人での財務諸表監査、地方自治体の包括外部監査に従事した経験を活かし、相談室の事務局業務及び相談対応を担当。日本公認会計士協会では、非営利法人委員会公益法人専門部会専門委員、公会計委員会公会計制度専門部会専門委員等を歴任。

 

 

月刊公益オンラインとは

財団法人・社団法人に特化した支援プログラム"シェアコモン200"の利用法人様向け実務専門誌『月刊公益』の記事を中心に、公益・一般法人に関するニュースや専門家による解説などをお届けする情報配信プラットフォームです。

詳しくはこちら
専門誌

無料登録のご案内

「月刊公益オンライン」に無料登録すると、登録の方限定の記事をご覧いただけるなど、実務に役立つさまざまな特典をご用意しております。

特典1

限定記事や
実務カレンダーが読めます!

「月刊公益オンライン」の無料登録の方限定記事や各月の事務局の作業内容がつかめる「実務カレンダー」をご覧いただけます。

特典2

最新の法改正に関する
セミナーなどの情報を受け取れます!

公益認定法改正など、最新の法改正とその対応に関するセミナーをはじめ、公益・一般法人の運営に必要な知識を深めることができる講習会の情報をお受け取りいただけます。

特典3

よくあるご相談内容をピックアップして
メールにてお届けいたします!

よくあるご相談内容に弁護士や税理士などの専門家が回答するQ&A集を、メールにてお受け取りいただけます。日々の業務のお困りごとや疑問解決にお役立てください。

特典4

公益法人・一般法人に特化した専門書籍を
10%オフで購入できます!

月刊公益オンラインを運営する公益法人協会では、社団・財団法人のための出版物を多数発行しております。無料登録いただいた方は、通常価格から10%割引でご購入いただけます。