財団・社団の印紙税Q&A
―課税・非課税の判断基準―

本記事は『公益・一般法人』2024年8月号の掲載記事を特別に無料公開しているものです。
また、印紙税の税額は、定額を基本としつつ、より担税力があると考えられる文書については階級別税額を適用するとともに、特定の文書には非課税措置が講じられ、一定の記載金額以下の文書には印紙税を課税しない仕組みとなっています。
【課税文書の要件】① 課税物件表(印紙税法別表第 1 )に掲げられている20種類の文書により証されるべき事項(課税事項)が記載されていること② 当事者間において課税事項を証明する目的で作成された文書であること③ 印紙税を課税しないこととされている非課税文書に該当しないこと ⑵ 非課税文書非課税文書とは、本来印紙税を納付しなければならない文書のうち、印紙税法で課税されない旨が規定されている文書であり、次が 該当します。 【非課税文書の要件】① 課税物件表(印紙税法別表第 1 )の非課税物件欄に掲げる文書
[例]金銭の受取書(領収書)に記載 された金額が5万円未満のもの② 国、地方公共団体または非課税法人(印紙税法別表第 2 )が作成した文書
[例]株式会社日本政策金融公庫③ 印紙税法別表第 3 に掲げる文書で、同表に掲げる者が作成した文書
[例]独立行政法人中小企業基盤整備機構が作成する一定の文書④ 特別の法律により、非課税とされる文書 ⑶ 不課税文書不課税文書とは、課税物件表(印紙税法別表第 1 )に掲げられていない文書、つまり「課税文書」及び「非課税文書」に該当しない文書をいい、印紙税の課税対象外です。 以上の要件を基に、課税文書に該当するかどうかの判断をどう行うか、【図表 1 】にまとめました。 【図表 1 :課税文書の判断チャート】
本来納付すべき印紙税を課税文書の作成のときまでに納付(貼付及び消印)をしていなかった場合には、本来納付すべき印紙税の3 倍に相当する額の過怠税が課されます。ただし、自主的に印紙税の不納付の申し出をした場合には、本来納付すべき印紙税の 1.1倍に相当する額が過怠税の額となります。
また、収入印紙は貼り付けてはいたものの消印(割印)をしていなかった場合には、消印(割印)されていない収入印紙の額面相当額の過怠税が課されます【図表 2 】。 【図表 2 :印紙税の過怠税】
石川広紀
(いしかわ・ひろき 税理士・本誌専門委員)
(いしかわ・ひろき 税理士・本誌専門委員)
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目 次
Ⅰ はじめに
印紙税は、契約書や領収書など、経済取引に伴い作成される広範な文書に対して軽度の負担を求める税であり、契約書や領収書などの文書を作成した場合には、これに収入印紙を貼付することが、取引上の慣習として定着しています。 契約書や領収書などの文書が作成される場合、その背景に、取引に伴って生じる何らかの経済的利益があるものと考えられています。また、経済取引について文書を作成するということは、取引の当事者間において取引事実が明確となり法律関係が安定化されるという 面もあります。印紙税は、このような点に着目し、文書の作成行為そのものに担税力を見出(いだ)して課税している税であるといえます。本稿では、印紙税の基礎として、その仕組みから公益・一般法人特有の取扱いまで、Q&A 形式で解説します。Ⅱ 課税される文書とは何か
1 印紙税法の仕組み
Q1 印紙税の課税対象について教えてください。A 経済取引に伴い作成される文書のうち、印紙税法で定められた20種の文書が課税の対象です。印紙税法は、経済取引に伴い作成される文書のうち、不動産の譲渡契約書、請負契約書、手形や株券などの有価証券、保険証券、領収書、預貯金通帳など、課税を行うにたる担税力があると認められる特定の文書を20種に分類した上で課税対象としています。 印紙税の納税義務は、課税文書を作成したときに成立し、その作成者が納税義務者となります。原則として納税義務者が作成した課税文書に印紙税に相当する金額の収入印紙を貼付することによって納税が完結する、簡素な仕組みとなっています。また、印紙税の税額は、定額を基本としつつ、より担税力があると考えられる文書については階級別税額を適用するとともに、特定の文書には非課税措置が講じられ、一定の記載金額以下の文書には印紙税を課税しない仕組みとなっています。
2 文書の種類
Q2 課税される文書とそうでない文 書の違いは何ですか?A 文書には、課税文書、非課税文書、不課税文書という区別があり、要件が異なります。課税事項を証する文書に該当しない場合は不課税文書に、該当しても非課税文書に相当しないものが課税文書とされます。課税文書、非課税文書、不課税文書の違いを具体的に見ていきましょう。 ⑴ 課税文書印紙税の課税対象となる文書のことを課税文書といいますが、課税文書とは次の 3 つに 当てはまる文書をいいます。【課税文書の要件】① 課税物件表(印紙税法別表第 1 )に掲げられている20種類の文書により証されるべき事項(課税事項)が記載されていること② 当事者間において課税事項を証明する目的で作成された文書であること③ 印紙税を課税しないこととされている非課税文書に該当しないこと ⑵ 非課税文書非課税文書とは、本来印紙税を納付しなければならない文書のうち、印紙税法で課税されない旨が規定されている文書であり、次が 該当します。 【非課税文書の要件】① 課税物件表(印紙税法別表第 1 )の非課税物件欄に掲げる文書
[例]金銭の受取書(領収書)に記載 された金額が5万円未満のもの② 国、地方公共団体または非課税法人(印紙税法別表第 2 )が作成した文書
[例]株式会社日本政策金融公庫③ 印紙税法別表第 3 に掲げる文書で、同表に掲げる者が作成した文書
[例]独立行政法人中小企業基盤整備機構が作成する一定の文書④ 特別の法律により、非課税とされる文書 ⑶ 不課税文書不課税文書とは、課税物件表(印紙税法別表第 1 )に掲げられていない文書、つまり「課税文書」及び「非課税文書」に該当しない文書をいい、印紙税の課税対象外です。 以上の要件を基に、課税文書に該当するかどうかの判断をどう行うか、【図表 1 】にまとめました。 【図表 1 :課税文書の判断チャート】
Ⅲ 印紙税はいつ誰が払うのか
Q3 印紙税はいつ課税されて、誰が納税するのですか?A 印紙税の納税義務は課税文書を作成したときに成立し、納税義務者は課税文書の作成者です。1 納税義務の発生
印紙税の納税義務は、課税文書を作成したときに成立します。 ここでいう作成したときとは、単なる課税文書を物理的に作る行為をいうのではなく、 作成した文書をその目的に従って行使することも含みます。 具体的には、文書の種類に応じて次の時点となります。 【納税義務が生じる時点】① 相手方に交付する目的で作成される課税文書 ⇒交付のとき [例]領収書、請書② 契約当事者の意思の合致を証明する目的で作成される課税文書 ⇒証明のとき [例]契約書、合意書、覚書2 納税義務者
印紙税の納税義務者は、課税文書の作成者です。課税文書の作成者とは、原則としてその課税文書に記載された作成名義人です。ただ し、法人の業務に関して、法人の代表者名義で作成する課税文書はその法人が作成者となります。 また、契約書のように 1 つの課税文書を2 者以上が共同して作成した場合には、その共同作成者は、作成した課税文書について、連帯して印紙税を納税する義務を負うことになります。 その場合、そのうちの 1 者がその課税文書に係る印紙税を納めたときは、他の者の納税義務は消滅することになります。3 納付方法
Q4 印紙税の納付方法について教え てください。もし納付をしなかった場合はどうなりますか?A 印紙税に相当する金額の収入印紙を課税文書に貼り付けて消印することで納付となります。納付しなかった場合は過怠税が課されますので注意しましょう。 課税文書の作成者は、課税文書に課されるべき印紙税に相当する金額の収入印紙を貼り付け、自己又は代理人等の印章又は署名にて消印(割印)をする方法により納付します。大量の課税文書を作成する場合には、納付方法の特例として一括納付の方法によることも可能です。本来納付すべき印紙税を課税文書の作成のときまでに納付(貼付及び消印)をしていなかった場合には、本来納付すべき印紙税の3 倍に相当する額の過怠税が課されます。ただし、自主的に印紙税の不納付の申し出をした場合には、本来納付すべき印紙税の 1.1倍に相当する額が過怠税の額となります。
また、収入印紙は貼り付けてはいたものの消印(割印)をしていなかった場合には、消印(割印)されていない収入印紙の額面相当額の過怠税が課されます【図表 2 】。 【図表 2 :印紙税の過怠税】
Ⅳ 印紙税額はどのように決まるのか
Q5 印紙税の金額はどのように決ま るのですか?A 印紙税法には「記載金額月刊公益オンラインとは
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