Vol.6 立入検査で指摘が多い事項に係る自己点検について

内閣府公益認定等委員会 事務局だよりPLUS+

※ これまでの内閣府メールマガジンの内容を再構築したものとなります。

 

 内閣府における立入検査は、例年9月頃から本格的に始動するところ、今年もその時期を迎えようとしています。
 これまでの立入検査の指摘の傾向をみると、以下のA~Cの事項について指摘される法人が毎年散見されております。

 

立入検査で指摘が多い事項
 内閣府の立入検査で指摘が多い事項として、次の3つの事項は毎年上位に入っています。
A:現預金・印鑑・金庫の管理不十分
B:備置き資料なし
C:議事録の不備
 この機会に、A~Cの事項について、以下を参考に自己点検されてはいかがでしょうか。

 

【A関連:健全な資産管理のために】
 法人におけるリスクマネジメントとして、金庫、印章、クレジットカード等を適切に管理しましょう。

 

○金庫

通帳、印章、小口現金、重要書類等を安全に管理・保管できるよう、施錠できる法人用の金庫や保管場所を用意していますか。

役職員間で、鍵の管理を行う者と出納業務等金庫内の保管物を扱う者を分けていますか。

○印章

契約等が正当に行われるよう、法人の印章の種類や使用範囲、管理・捺印責任者、保管方法、印影等を定めた印章管理規程を設けていますか。

使用印章や使用日、使用目的、使用者等を把握できる印章管理台帳を備えていますか。

○クレジットカード

適切に支出管理ができるよう、事前に使用目的や金額等を申請し複数人で承認する体制が取られていますか。

事後的に、使用事実や支出の適正をチェックする仕組みが設けられていますか。

 

【B関連:公益法人が備え置かなければならない書類等について】
 何人も、公益法人の業務時間内は、いつでも、財産目録等について閲覧の請求ができ、正当な理由がないのにこれを拒んではならないことになっています(認定法第21条第4項)。
 このため、法令で定められた以下の書類が法人の事務所に適切に備え置かれ、閲覧可能な状態になっていることが求められます。該当する全ての書類が揃っていますか。

 

○事業計画書等
⑴ 事業計画書
⑵ 収支予算書
⑶ 資金調達及び設備投資の見込みを記載した書類

※ ⑴~⑶は、主たる事務所に毎事業年度開始の日の前日から当該事業年度の末日までの間、従たる事務所に写しを備え置くこと(認定法第21条第 1 項、同法施行規則第27条第1項)
 

○事業報告等
⑷ 財産目録
⑸ 役員等名簿
⑹ 役員報酬等の支給基準
⑺ キャッシュ・フロー計算書(会計監査人設置法人)

⑻ 運営組織及び事業活動の状況の概要及びこれらに関する数値のうち重要なものを記載した書類(事業報告等に係る提出書の「別紙 1 :認定法施行規則第28条第1項第2号に掲げる書類」のこと)

⑼ 社員名簿(公益社団法人)

※ ⑷~⑻は、主たる事務所に毎事業年度の経過後3か月以内から5年間、従たる事務所に写しを3年間、備え置くこと(認定法第21条第2項、同法施行規則第28条第1項)

 また、⑼は、主たる事務所に常時、備え置くこと(法人法第32条第1項)
 なお、⑸と⑼は、当該公益法人の社員又は評議員以外の者から請求があった場合には、個人の住所部分を除外して閲覧させることができる(認定法第21条第5項)

 

○計算書類等
⑽ 貸借対照表(注記を含む)及びその附属明細書
⑾ 損益計算書(注記を含む)及びその附属明細書
⑿ 事業報告及びその附属明細書
⒀ 監査報告
⒁ 会計監査報告(会計監査人設置法人)

※ ⑽~⒁は、主たる事務所に定時社員総会又は定時評議員会の日の2週間前の日のから5年間、従たる事務所に写しを3年間、備え置くこと(法人法第129条第1項・第2項、第199条)
 

○その他の書類
⒂ 定款

⒃ 特定費用準備資金の積立限度額やその算定の根拠等について記載された書類(認定法施行規則第22条第3項第4号)
⒄ 資産取得資金の目的である財産の取得(又は改良)に必要な最低額やその算定の根拠等について記載された書類(認定法施行規則第22条第3項第3号)
⒅ 5 号財産及び 6 号財産の内容等について記載された書類(認定法施行規則第22条第3項第5号・第6号)
※ ⒂は、主たる事務所及び従たる事務所に常時、備え置くこと(法人法第14条第1項、第156条第1項)

 また、⒃~⒅は、認定法第21条の規定の例により備置き及び閲覧等の措置が講じられている必要がある(認定法施行規則第18条第3項第5号、第22条第 4項・第5項)

 

○このほか、以下の議事録についても備置きが必要です
(ア) 社員総会又は評議員会の議事録

開催の日から10年間、主たる事務所に、写しを従たる事務所に5年間、備え置くこと(法人法第57条第2項・第3項、第193条第2項・第3項)

(イ) 理事会の議事録

開催の日から10年間、主たる事務所に備え置くこと(法人法第97条第1項)
 

【C関連:議事録作成と記名押印について】
 各会の議事録について、書面決議を活用した場合も含めてポイントを押さえられていますか。

⑴ 議事録の作成
 社員総会、評議員会、理事会(社団、財団共通)の議事録の作成は、以下の点で共通しています。

法人法上その作成が義務付けられています(法人法 第57条、第193条第1項、第95条第3項)
作成方法は、書面又は電磁的方法によります。
議事録の記載事項が法令に定められています(法人法施行規則第11条、第15条、第60条)。
作成した議事録は、各会の日から10年間主たる事務所に備え置かなければなりません。
 

⑵ 議事録への署名又は記名押印

○理事会の議事録
 理事会に出席した理事及び監事は、これに署名し、又は記名押印しなければならないとされています。ただし、法人法は、定款で議事録に署名し又は記名押印しなければならない者を当該理事会に出席した代表理事とする旨の定めを置くことを許容しており、定款にこの定めがある場合には、当該代表理事及び監事が署名又は記名押印することになります(法人法第95条第3項)。

 

○社員総会及び評議員会の議事録
 理事会の議事録と異なり、法令上、社員総会及び評議員会の議事録への署名又は記名押印は求められていませんが、議事録の原本を明らかにし、改ざんを防止してトラブルを回避するという観点から署名又は記名押印を行うことが望ましいとされています。
 もっとも、定款で議事録へ署名又は記名押印する者を規定しておくことは妨げられていません。定款に当該規定がある場合には、定款の定めにしたがって署名又は記名押印をすることになります。定款で署名又は記名押印する者を規定していないときは、法人法施行規則第11条第3項6号、第60条3項7号から
議事録の作成に係る職務を行った者が行うと解されています。
 議事録の作成に係る職務を行った者(=議事録作成者)とは、実務上は議事録について最終的な決裁をした代表理事が行っているのが一般的ですが(松井信憲(2021年)『商業登記ハンドブック【第4版】』商事法務)、定款又は理事会において議事録を作成する業務執行理事を選定することもできるとされています(熊谷則一(2021年)『【第2版】逐条解説一般社団・財団法人法』全国公益法人協会)。

 

○署名か記名押印か
 法人法上、議事録の作成においては署名又は記名押印のいずれかを任意に選択することができます。

 

⑶ 書面決議の場合の留意事項

○議事録に記載すべき内容が異なります
 例えば、通常の社員総会であれば、法人法施行規則第11条第3項に掲げられている内容を記載しますが、書面決議の場合は、同条第4項の内容を記載することとなります。

 

○署名又は記名押印者の氏名が変わります
 法人法施行規則第11条第6項では、「議事録の作成に係る業務を行った者の氏名」とされていますが、⑵で説明したとおり、代表理事(又は定款、理事会で選定された業務執行理事)が議事録作成者として署名又は記名押印することが通常ですので御留意ください。


文責●内閣府公益認定等委員会事務局

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