公益法人が「顧問税理士」と上手に付き合うには
―業務範囲と役割分担を整理して関係強化―
(うえなか・たかあき 税理士)
Ⅰ はじめに
多くの法人にとって、身近な専門家である顧問税理士。全国に約8万人税理士がいると言われていますが、税理士にも専門分野があるため、公益法人の分野の経験がほとんどない税理士もいます。税理士は何でも対応できる万能な存在だと思われがちですが、顧問税理士の役割には限界があります。
「中期的収支均衡について確認したい」、「定期提出書類を作ったのでチェックしてほしい」、「公益法人会計基準や認定法に基づいたアドバイスがほしい」、「記帳を代行してほしい」など、公益法人特有の悩みから一般的な税務まで、顧問税理士に求める内容はさまざまあると思います。法人の規模や状況によって、適切な顧問税理士は異なります。
これから顧問税理士との契約やセカンドオピニオンを考えている法人は、自法人の抱えている課題と税理士に求めることを整理した上で、税理士と新たな関係を結ぶことが大切になります。
本稿では、公益法人が顧問税理士と関係を構築するに当たり、最適なパートナーを見極めるための判断軸を示します。
Ⅱ なぜ公益法人には「専門の税理士」が必要なのか?役割と独占業務
1 顧問とは
各分野の専門家である士業と顧問契約を結ぶと、日々の困り事について相談できたり、様々なアドバイスやサポートを得られたりと、継続的な支援を受けることができます。一般に、顧問契約を結んだ税理士を「顧問税理士」と呼び、税理士との継続的な関係を持つことができます。
顧問弁護士は敷居の高いイメージからあまり馴染みがないかもしれませんが、顧問税理士と契約している法人は多いので、税理士は多くの法人にとって身近な専門家と言えるでしょう。
2 税理士の業務
税理士だけが行える業務(独占業務)は①税務代理、②税務書類の作成、③税務相談の3つです。
①税務代理は、納税者の代わりに税務申告書を提出したり税務署に対して陳述等を行ったりする業務です。
②税務書類の作成は、法人税申告書などの申告書類を作成する業務です。
③税務相談は、税務に関する具体的な相談を行う業務です。
これらの業務は、税理士以外の者は行うことができません。有償無償は問われないため、税理士以外の者が無償で税務相談に応じることもできません。
3 税理士の専門分野
税理士であれば税務に関することは何でも万能に対応できると思われるかもしれません。しかし、税務の分野は幅が広く、1人の税理士があらゆる分野について高度なレベルで網羅的に対応することは難しいです。
医師には眼科、皮膚科、耳鼻咽喉科のように専門領域があります。税理士も同様に、相続税、国際税務、事業承継税制のように専門分野があります。そして、多くの税理士は中小企業(営利企業)に関する業務をメインで行っています。
2025年12月時点で公益法人(公益社団法人・公益財団法人)は約1万法人。税理士は約8万2000人です。公益法人の業務に携わっていない税理士の方が大多数でしょう。公益法人の場合、法人税法や消費税法といった税法だけでなく、公益法人として順守すべき法令(公益認定法など)も把握しておく必要があることから、公益法人を専門とする税理士との顧問契約が理想です。
なお、社会保険関係の手続は社会保険労務士の業務範囲であるなど、公益法人を専門としている税理士であっても何でも万能に対応できるというわけではありません。
Ⅲ 【規模別】事務局が顧問税理士に依頼すべき業務範囲の整理術
公益法人が税理士と契約する場合、税理士に何を依頼するかということがポイントになります。どこまで税理士へ依頼し、どこを自法人で対応するかというのは、法人の規模など状況によって変わってきます。
1 小規模な法人
大規模な法人の場合には、事業活動を行う部門と管理活動全般を行う総務部門に分かれており、総務部門内でも経理専属の職員が配属されています。一方、小規模な法人では、経理専属の職員がいないことは珍しくありません。事業活動を担う合間に経理など総務業務全般を行う場合や、事業部門は行わないものの総務全体の業務と兼務している場合など、様々なケースがあります。
総務全体の業務と兼務している場合には、給与計算など他の総務業務との関連を把握しやすく、管理部門を全て解決できる安心感があります。しかし管理業務が特定の職員に集中してしまうことから、ミスや不正が見逃されてしまう懸念もあります。そこで、税理士に日々の会計帳簿のチェックや、内部統制の指導を依頼することが考えられます。
事業活動を行う合間に経理事務を行っている場合には、日々の入出金などの業務は法人内で行い、会計帳簿への記帳代行(会計ソフトへの入力)を税理士事務所へ依頼するという役割分担が考えられます。その他、年末調整や法定調書の作成、固定資産台帳の作成(減価償却費の計算)も税理士へ依頼することで業務効率を上げることができるでしょう。
2 大規模な法人
法人の規模が大きい場合には、記帳代行を依頼することはなく、決算書の作成支援や、税務面での支援、内部統制の指導などを税理士へ依頼することが考えられます。
法人の規模にかかわらず、公益法人会計の基本や公益法人の財務3基準を満たすための指導を受けることも検討することになるでしょう。
Ⅳ 失敗しない税理士選びと関係構築
1 税理士への依頼
これまで税理士との契約がない場合には、新たに税理士を探すことになります。税理士へ依頼する際には、どこまで自法人で対応し、どこを税理士に依頼したいかということを明確にしておくと良いでしょう。
明確にすることが難しい場合でも、現在の状況を税理士に説明して相談することで、税理士側から支援できる範囲を示してもらいやすくなります。現在の収支規模や日々の取引数(仕訳数)、拠点数(支部の数)、事業数、収益事業の有無、中間決算を行っているかなど、法人の状況を伝えると、税理士側は業務を受けることができるかの判断や見積もりの作成を行いやすくなります。
税理士と契約する場合には、新年度から関与してもらうことが一般的ですが、期中でも契約することができる税理士事務所もありますので、要相談となります。
すでに税理士と顧問契約をしている場合には、そのまま継続して契約を続けるというのが基本的な考え方だと思います。顧問契約を結んでいる場合には、税理士側は法人の日々の状況を理解しているため、突発的な問題が生じた際もサポートしてもらいやすいです。
ただし、前述したように税理士にも専門分野があるため、現在の税理士が公益法人を専門にしているとは限りません。これまでの税理士事務所との契約を解約して、公益法人を専門にしている税理士事務所と顧問契約を結ぶという選択肢もあるかもしれません。
これまでの法人の事業内容を把握していることや、地元密着であることなどの理由から、顧問契約を変更することは考えにくい場合もあると思います。そのような場合には、これまでの税理士事務所との契約はそのままにして、公益法人を専門分野としている税理士にセカンドオピニオンとして関与してもらうという選択肢もあります。セカンドオピニオンとして、公益法人会計の基本や公益法人の財務3基準対策など、公益法人特有の論点のみを支援してもらうという方法です。
顧問契約をしている税理士事務所を変更する場合には、年度切り替えのタイミングでの変更が一般的です。例えば、3月決算法人の場合には、決算・申告が終了する5月末、又は定期提出書類の提出が済む6月末まで、今までの税理士に依頼し、6月又は7月から新たな税理士事務所との関係がスタートするという流れです。
2 税理士事務所の特徴
税理士事務所には、個人事業主として経営している「税理士事務所」と、複数の税理士とで法人を設立して共同経営を行っている「税理士法人」があります。税理士事務所は小規模で顧問先数が少ない反面、有資格者である所長が丁寧に対応する傾向にあります。一方、税理士法人は大規模で顧問先が多いため、豊富な事例を持っていますが、有資格者ではない補助者が窓口となって対応する傾向にあります。
その他、税理士の年齢、相談方法、支援内容、知見、会計ソフト、担当者といった点からも税理士事務所の特徴が分かれるため、どのような税理士が自法人にマッチするか検討すると良いでしょう。税理士の支援体制によって税理士報酬も変わってきます。
自法人が税理士に求めるものを、例えば以下のようなチェックポイントから整理しておくと、ミスマッチを防ぐことができるでしょう。
【自社に最適な税理士を見極めるためのチェックポイントの例】
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税理士の年齢
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☑ 経験豊富だが高齢の税理士
☑ 若手でフットワークが軽く相談しやすい税理士
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相談方法
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☑ メールや電話での相談が中心で対面相談は基本的にない
☑ メールや電話以外にチャットで気軽に相談できる
☑ メールや電話の他、定期的に訪問してくれて対面相談できる
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支援内容
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☑ 質問したときだけ回答してくれる必要最低限なサポート
☑ 税理士報酬は高額だが、提案してくれるなど充実したサポート
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知見
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☑ 業界特有の問題も把握している税理士
☑ 幅広い分野に知見を持っている税理士
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会計ソフト
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☑ 税理士側が指定した会計ソフトしか対応できないケース
☑ 税理士側が法人の会計ソフトに合わせるケース
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担当者
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☑ 有資格者である税理士が直接窓口となって対応
☑ 税理士の補助者(無資格者)が窓口となって対応
☑ チーム制で複数人による対応
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Ⅴ まとめ
一口に「顧問税理士」と言っても様々な税理士がいます。税理士であれば何でも知っている万能の存在ではないため、税理士と自法人との役割分担をしっかりと行いましょう。顧問契約中の税理士との関係性をより強固なものにし、質を高められるのが理想です。
事情により難しい場合には、顧問税理士を変更することや、セカンドオピニオンを検討することになります。その際には、何が課題となっているかを整理し、自法人に合った税理士と関係を構築できるよう、自法人が求めていることを明確にすることが大切です。
税理士。全国公益法人協会相談室顧問。みずほインベスターズ証券(現みずほ証券)、財団法人、KPMG税理士法人等を経て税理士事務所を開設。公益法人への会計・税務・運営面の総合的な支援業務を中心に従事。
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