理事会の開催を減らしたいけれど「みなし決議」だけで大丈夫?
(わしざわ・かつえ 全国公益法人協会 相談室職員/公認会計士)
理事会の開催を減らしたいけれど「みなし決議」だけで大丈夫?
当法人は理事会設置法人ですが、代表理事や業務執行理事が理事会に行う「職務執行状況の報告(定期報告)」は、どの程度の頻度で、どのように行う必要がありますか?また、定款で「みなし決議(決議の省略)」が可能な場合、普段は書面決議のみで運用し、理事会の開催回数自体を減らしても問題ないのでしょうか。メールでの共有が「報告」に代えられるのかも教えてください。
![]()
定期報告は「実開催」が原則。みなし決議だけでは不十分です!
実務上はみなし決議を補助的に活用しつつ、定期的な理事会開催を併用していく運用が現実的といえます。代表理事及び業務執行理事は、原則として3か月に1回以上、自己の職務執行状況を理事会に報告しなければなりません。定款で「毎事業年度に4か月を超える間隔で2回以上」などと定めている場合は、その定めに従います。この「定期報告」については、通知による省略(理事会への報告の省略)が認められていないため、メール共有のみで済ませることはできません。実務上は、報告義務を果たすために、定期的な理事会の開催が必要となります。
なぜ「定期報告」が求められるのか
理事会設置法人において理事会は、法人の重要事項を決定し、理事の職務執行を監督する機関です。代表理事・業務執行理事が定期的に職務執行状況を報告するのは、理事会が現状を把握し、必要に応じて確認・是正・追加の指示等を行えるようにするためです。これは、理事会の承認を得るための手続というより、監督の前提となる情報共有として位置づけられます。
省略できる報告、できない報告
法人法98条1項では、一定の事項について理事・監事全員への通知をもって「理事会に報告すべき事項」を省略できるとしています。しかし、同条2項により、91条2項の「定期報告」はこの省略の対象外と明示されています。このことは「内閣府公益法人メールマガジン」176号R5.9.6でも明記されています。したがって定期報告については「メールで送ったから今月の理事会報告はなし」という運用は法的に認められません。
「みなし決議」活用の落とし穴
全員の同意がある場合に議事録作成のみで決議を成立させる「みなし決議(法人法96条)」は便利ですが、これだけを繰り返すと、定期報告を行う「場」がなくなってしまい、結果として、法定の報告義務(3か月に1回以上等)を欠くリスクが生じる可能性がありますので、注意が必要です。
したがって実務上は、みなし決議を活用する場合でも、定期報告の法定頻度(または定款で定めた頻度)に合わせて、最低限その間隔で実際に理事会を開催し、その場で報告を行う運用が必要になります。みなし決議はあくまで「補助」として使い、定期的な理事会開催と組み合わせるのが実務上の着地点です。
注意すべき実務上のポイント
理事会の開催頻度を検討する際は、次の点に留意してください。
・定例理事会の年間スケジュールの策定
四半期ごと等、法人法91条2項(または定款で定めた間隔)を満たす頻度で「定期報告を行う理事会」を年間で予定化します。議題が少ない回でも、報告の回として開催する発想が重要です。
・みなし決議は「補助輪」として使う
緊急・軽微で全員同意が確実なものは、法人法96条の範囲で省略決議を併用します。ただし、定期報告の間隔を超えて理事会を開催しない状態が続かないようにします。
・報告の粒度を整える
報告は、細かな業務日報ではなく、理事が監督・判断しやすい粒度が適します。例えば、主要事業の進捗、重要案件の見通し、リスク・インシデント、重要な契約・資金面の動き(必要に応じて)、次回までの見通しなど、理事が意思決定に必要な情報を中心にA4用紙1~2枚程度に整理すると、議論がしやすくなります。
・記録の残し方を整える
後から「いつ/誰が/何を」報告したかが追えるよう、議事録に報告実施の事実と概要を残し、必要に応じて報告資料を添付します。Web開催の場合も同様で、開催方法や出席方法等の事実関係を記載しておくと運用が安定します。
定期報告を確実に履行するためのステップ
最低限押さえておきたい実務対応として次のものがあります。
これから理事の改選が行われる法人様も多い時期かと思います。多くの法人様では、2月頃の予算承認及び5月頃の決算報告に係る理事会の際に定期報告を行うケースが見られます。
この場合、新任の理事が年2回以上の報告義務を満たすためには、就任後、予算承認の理事会を待たずに理事会を開催する必要が生じます。理事会運営のスケジュール設計にあたっては、こうした点も踏まえてご検討ください。
国税専門官としての実地調査、監査法人での財務諸表監査、地方自治体の包括外部監査に従事した経験を活かし、相談室の事務局業務及び相談対応を担当。日本公認会計士協会では、非営利法人委員会公益法人専門部会専門委員、公会計委員会公会計制度専門部会専門委員等を歴任。
月刊公益オンラインとは
財団法人・社団法人に特化した支援プログラム"シェアコモン200"の利用法人様向け実務専門誌『月刊公益』の記事を中心に、公益・一般法人に関するニュースや専門家による解説などをお届けする情報配信プラットフォームです。
詳しくはこちら
無料登録のご案内
「月刊公益オンライン」に無料登録すると、登録の方限定の記事をご覧いただけるなど、実務に役立つさまざまな特典をご用意しております。
限定記事や
実務カレンダーが読めます!
「月刊公益オンライン」の無料登録の方限定記事や各月の事務局の作業内容がつかめる「実務カレンダー」をご覧いただけます。
最新の法改正に関する
セミナーなどの情報を受け取れます!
公益認定法改正など、最新の法改正とその対応に関するセミナーをはじめ、公益・一般法人の運営に必要な知識を深めることができる講習会の情報をお受け取りいただけます。
よくあるご相談内容をピックアップして
メールにてお届けいたします!
よくあるご相談内容に弁護士や税理士などの専門家が回答するQ&A集を、メールにてお受け取りいただけます。日々の業務のお困りごとや疑問解決にお役立てください。
公益法人・一般法人に特化した専門書籍を
10%オフで購入できます!
月刊公益オンラインを運営する公益法人協会では、社団・財団法人のための出版物を多数発行しております。無料登録いただいた方は、通常価格から10%割引でご購入いただけます。


