社会的インパクト情報による対話の促進
(かわしま・かずひろ 東北工業大学ライフデザイン学部教授 /(公社)非営利法人研究学会常任理事)
2022年6月7日、岸田文雄政権は「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」(新しい資本主義)及び「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太の方針2022)を閣議決定し、従来の「リスク」、「リターン」に加えて「インパクト」を測定し、「課題解決」を資本主義におけるもう1つの評価尺度としていく必要性を謳った。
内閣府は、民間にとっての利便性向上の観点から、公益法人制度の見直しに必要な検討を行うため、「新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議」を設置し、2023年6月2日に「最終報告」を公表した。そこでは、民間における「公」の主たる担い手となる「公益法人」の役割を強調し、社会的課題解決に向けた公益的活動の活性化と国民からの信頼を得るガバナンスや説明責任の充実を求めた。また、新たな事業展開にチャレンジして新たな社会的価値を創造し、成果として社会的インパクトを創出していくことが期待された。
「最終報告」では、「インパクト測定・マネジメント」(Impact Measurement and Management:IMM)の先進的な取組みについては、法人・経済界等と連携して、他の法人の取組みの参考となる情報を発信し、その普及を謳っている。また、IMMを「事業が社会的課題の解決に及ぼす正負のインパクトを定量・定性的に測定し、測定結果に基づいて事業改善や意思決定を行うことを通じて、正のインパクトの向上、負のインパクトの低減を目指す日々のプロセス」と定義している。
公益財団法人の社会変革推進財団(SIIF)のWebサイト(https://www.sif.or.jp/)では、IMMを「企業や投資家が社会的または環境的な成果を測定し、その成果を最大化するための測定・管理手法」と定義し、投資活動や企業運営がどれだけ社会的課題解決に貢献したかを評価し、その結果に基づき戦略を調整することで、より持続可能でインパクトの大きい成果を生み出すための手段と説明している。
現在、改正認定法施行規則53条により、2025年度以降の事業報告ではIMMに関連する記載がより意識されることから、内閣府においては取組事例集を公表している。
今後、公益法人が継続的・発展的に社会的課題解決に取り組むためには、国民からの信頼を確保し、その支援・寄付に広く支えられていくことが必要であり、寄付者(個人か企業かなど)に応じた戦略的な情報発信が重要となる。
公益法人は、ガバナンスの充実とともに、国民にわかりやすい情報(財務情報・非財務情報)を発信するうえで、取組みの成果を可視化する社会的インパクト情報による対話の促進が大切となる。
日本管理会計学会理事。明治大学大学院商学研究科博士後期課程単位取得満期退学。1994年4月に岩手県立宮古短期大学専任講師。2000年4月に苫小牧駒澤大学国際文化学部専任講師を経て、2008年4月に教授。2017年5月に苫小牧駒澤大学学長。2020年4月より現職。著書は、『政府・非営利企業会計』(共著、創成社、1995年)、『病院管理会計』(共著、五絃舎、2006年)など。
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