「ヒト」から始める公益事業の新アプローチ ―地域人財を活かす組織作り―

桜井政成
(さくらい・まさなり 立命館大学准教授)
 
「アセット・ベースド・コミュニティ・ディベロップメント」とは ― 。「課題」ありき、ではなく「ヒト」ありきの地域作りが今注目を集めている。

ABCDは地域作りの新たな発想

本稿は、先進国・途上国で広く、地域の課題改善・活性化のために用いられている手法である「アセット・ベースド・コミュニティ・ディベロップメント」(Asset-Based Community Development。以下「ABCD」と略記する。)の概略と基本的な方法を伝え、広く公益事業に役立ててもらおうとするものである。
ABCDをカタカナ英語で紹介し、あえて翻訳をしていないことを最初にお詫びしておきたい。それは、翻訳することによって、ABCDの内容を誤解することにもつながりかねないと考えるからである。その理由を理解していただくために、言葉の意味、定義をまずは簡単に紹介しておきたい。
まず、アセット・ベースド・コミュニティ・ディベロップメントの後半部分、「コミュニティ・ディベロップメント」についてである。この用語が北米や英国で使われ出したのは、第二次世界大戦中~後とされており、米国で言えばニューディール政策の時期であると言われている。現在、その定義は多様であるが、例えば、「一定の地理的範囲・あるいはそこに住む特定の課題を抱えた人々(=コミュニティ)に対して、メンバーの集団的行動を基盤として、経済的、社会的、環境的、文化的な問題の解決を図るプロセス」とするのが、代表的であろう(注1)。この定義は、4つの含意を有している。まず、コミュニティという概念は現在ではきわめて広範な意味を持つに至っているが、ここでは地理的な範囲を意識した意味に限定していることである。
 
しかし逆に、2点目として、ディベロップメントという用語は、狭

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