消費税申告書作成における留意点と会計ソフトの活用方法―平成29年度版―
2018年05月22日

米満まり
(よねみつ・まり 税理士)
(よねみつ・まり 税理士)
- CATEGORY
- 税務解説・消費税・会計ソフト
- 対 象
- 公益法人・一般法人
目 次
- はじめに
- Ⅰ 消費税申告書作成までの流れ
- Ⅱ 消費税の課税対象
- Ⅲ 消費税の各取引の区分と留意点(国内取引)
- Ⅳ 納税義務の判定の方法と留意点
- Ⅴ 消費税の計算方法の選択
- Ⅵ 仕入控除税額の計算の特例(一般課税)
- Ⅶ 会計ソフトの活用方法
- おわりに
はじめに
公益法人・一般法人の活動は、営利法人とは異なる部分が多いが、法人税の収益事業課税のような取扱いは消費税にはなく、課税対象となる範囲は営利法人と同じである。また、公益法人・一般法人は、寄附金や補助金等(いわゆる特定収入)の対価性のない収入が多く、課税事業者となった場合には、それらの収入が消費税の計算に大きな影響を与えるので、営利法人よりも複雑な計算体系になっている。さらに、税率の段階的な引上げ、納税義務者や簡易課税の見直し等の改正が目まぐるしく、適切な申告・納税を行うためには、納税者となる事業者に専門的な知識習得と実務処理が求められている現状にある。そこで、本稿では、消費税の納税義務の判定や計算方法における留意点、さらに会計ソフトの活用方法についても紹介する。
Ⅰ 消費税申告書作成までの流れ
消費税の最終的な負担者は一般消費者であり、その一般消費者が負担した消費税を申告・納税するのは事業者である(間接税)。事業者とは、個人事業者又は法人のことをいうため、公益法人・一般法人も消費税の納税義務者の対象である。消費税には免税点が定められているので、事業者はまず、納税義務の発生の有無を判断する必要がある。納税義務が発生していれば課税事業者となり、複数ある消費税額の計算方法から要件にあった計算方法を選択する。それぞれの計算方法には、消費税上の取引区分を日々の帳簿作成の過程で行うことが求められており、1事業年度中の取引区分を集計することで、その事業年度の納付税額を計算する。日々の帳簿作成で適切な区分を行うことが最も重要な実務処理といえる(図1参照)。
図1 消費税申告書作成までの流れ
Ⅱ 消費税の課税対象
消費税の課税対象は、国内取引と輸入取引の2種類があり、国外で行われる取引(不課税取引)は課税対象ではない。消費税の計算において最も複雑なのは、国内取引の区分判定である。国内取引には課税対象となる「資産の譲渡等」に①課税取引(8%)、②輸出免税取引、③非課税取引があり、課税対象とならない「資産の譲渡等に該当しない取引」として④不課税取引がある。つまり、①課税取引、②輸出免税取引、③非課税取引、④不課税取引を区分する必要がある。
前記の4つの取引のうち、①課税取引以外は、消費税8%が含まれていない取引であるが、その取引の性質は全く異なるものであり、申告納税額の計算において適切に区分をすることが求められている(前頁図2参照)。
図2 消費税の課税対象となる取引
Ⅲ 消費税の各取引の区分と留意点(国内取引)
1 課税取引(8%)
事業者が国内において対価を得て行う資産の譲渡、資産の貸付け、サービスの提供を行えば消費税の課税対象となる。その中で、輸出免税取引と非課税取引以外は、消費税8%が含まれている課税取引となる。課税取引とは、取引の性質から判定するものであり、取引先又は一般消費者との間で締結した契約金額又は受領金額等に消費税が付加されているかどうかは影響しない。事例①:駐車場の貸付け
駐車場用地の貸付けの場合、コンクリートやフェンス等の整備を行い貸し付けた場合は課税取引となり、整備をせずに土地をそのまま貸し付ける場合には、土地の貸付けとして非課税取引となる。ただし、土地の貸付けでも、その貸付期間が1か月未満の場合は、課税取引となる。
事例②:研修、講習会の参加費として会員から徴収した会費
同業
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