第8回 年寄襲名が暗示する〝白鵬問題 のゆくえ(下)

藤島寒月
(フランス現代社会学者)

 引退後の白鵬の処遇を決定する際の「理論的根拠」を提供する文献となった『大相撲の継承発展を考える有識者会議提言書:大相撲の伝統と未来のために』(2019年、以下「提言書」)に、次のようなくだりがある。前回その一部を引用したが、表題の問題を考える上で重要な記述なので、再度引用する。
 「大相撲は興行でありながら求道であり、スポーツでありながら伝統文化であり、神事性を持ちつつ土俵入りや三段構え、弓取式などの演劇性も帯びており、実に多面的な要素をあわせ持っている」(13頁)。
 以下では取りあえず便宜的に、「興行・スポーツ・演劇性」を「娯楽性」、「求道・伝統文化・神事性」を「文化性」と、それぞれ総称することにする。

対立物の統一が永続性の根源

                           

この記事は有料会員限定です。

Copy Protected by Tech Tips's CopyProtect Wordpress Blogs.