其之十三 什器備品費用の減価償却

(ふるいち・ゆういちろう 大原大学院大学教授)
減価償却における200%定率法
しばしばいわれるように、減価償却とは、固定資産の購入に要した支出額をその使用期間(耐用年数)に費用として定期的に配分する処理であるといえる。その意義としては、固定資産の価値の減少を記録するというよりも、支出を費用として配分することに重きが置かれており、コスト計算との関係が重要になる。
この場合に、どのようにその費用を配分していくかが問題となるが、定期的な費用配分を想定した場合に、主にその毎期の費用の額を一定にする定額法と、費用化する割合(率)を一定にする定率法という 2 つの手法が考えられる。今回は、定率法のうち200%定率法について考える。
200%定率法は法人税法上、定率法を用いた場合の減価償却資産の償却限度額を示しており、定額法の 2 倍の償却率で定率償却を行うことからこのように称される。例えば、耐用年数が 4 年とすると償却費は毎期25%ずつ配分されるが、これの 2 倍ということで償却率は50%(0.5)となる。
ただし、この200%定率法を用いると、耐用年数の前半には、取得原価に対して多くの金額が費用化される。一方、後半の減価償却費はかなり小さくなるので、全額を償却するためにかなりの期間がかかり、耐用年数を超過してしまう。そのため、毎年の減価償却費の下限を定めて、償却年数が道理にかなった範囲になるように調整が行われる。
その減価償却費の下限を示すために、取得原価に保証率をかけた償却保証額を計算する。すなわち、調整前の償却額(決算整理前の未償却残高×償却率)が償却保証額を上回っている場合には、それまでと同じ、当初設定した償却率で減価償却を行い、逆に調整前の償却額が償却保証額を下回っている場合には、改定償却率を用いて減価償却費を算定することとなる。
【図表 1 :調整前償却額の算定方法】
調整前償却額の算定
今回の設例において、2016年度期首に購入した固定資産の2018年度決算の減価償却費を計算するには、2018年度決算前の未償却残高(今回のケースでは減価償却の記帳が直接法で行われているので、この什器備品の貸借対照表価額)を算定する必要がある。それを知るには、2016年度および2017年度末の未償却残高を計算する必要があるが、【図表 1 】のように各期における未償却残高に償却率をかけて示される減価償却費を控除した金額で示される。
2017年度末の未償却残高540が2018年度決算における調整前償却額の算定の基礎となり、この540に償却率0.4をかけた216が調整前償却額となる。取得原価1,500に保証率0.108をかけた162が償却保証額となるが、本設例では調整前償却額(216)≧ 償却保証額(162)となるので、調整前償却額216がそのまま当期の減価償却費となる。もし、この調整前償却額が償却保証額を下回っている場合には、改定償却率(0.5)を用いて当期の減価償却費が計算される。
なお、減価償却手続が果たす役割について、減価償却により当該資産の取替えに必要となる資金が内部に留保されるという説明が行われることがある。確かに、減価償却費は現金の支出を伴わない費用なので、対応する収益がすべて現金の収入を伴う場合には、支出を伴わない費用の分だけ現金が留保されることになるが、実際には借入金の返済等が行われた場合に現金の支出を伴うので、減価償却分だけ資金が内部留保される保証はない。そのため、公益法人のように資産の取替えを計画的に行って継続的に必要なサービスの提供を目指す場合には、減価償却費と同額の現金を特定資産のような形で別に積み立てる必要が生じる。
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