営利競合と「非営利の失敗」と法人税法施行令5条2項1号

星 さとる
(ほし・さとる 全国公益法人協会客員研究員)

 

 2024年12月改訂公益認定等ガイドラインには、「営利企業等が実施している事業と類似する事業にあっては、社会的なサポートを受けるにふさわしい公益目的事業としての特徴があることを事業内容等に応じて必要な確認をすることが求められる」とある。いわゆる営利競合問題である。
 認定法の公益認定基準の多くは、2006年の制度改革前の「設立許可審査基準等に関する申し合せ」以降のいわゆる「指導監督基準」の内容を実定法の条文にしたものである。
 最初の1972年の「申し合わせ」から指導監督基準には「公益法人の事業(付随的に行なう収益を目的とする事業を除く。)は、(中略)営利企業が行うのが適当と認められる性格、内容の事業を主とするものでないこと」という内容が盛り込まれた。この「申し合わせ」は、それに先立つ行政監察の結果を受けて策定されたものということになっているが、当の行政監察では、営利企業との競合は指摘されていない。行政監察の指摘と「申し合わせ」策定との間の過程で何があって、なぜ指摘になかった営利競合の除外が盛り込まれたのか、今のところその経緯は不明である。
 そもそも、民間非営利部門の存在意義は、「市場の失敗、政府の失敗」で説明されるのが一般的だが、著名な研究者である故レスター・サラモンは、政府が先で非営利が後ではなく、まず非営利の活動があり、その限界=「非営利の失敗」を補完するために政府が登場したのだと提唱した。この「逆転の発想」をさらに進めるなら、「市場(営利)が先、非営利が後」という前提も疑う余地があるのではないか。歴史を紐解けば、市場経済の遥か以前から、人類は贈与や相互扶助といった非営利的な生産・経済活動を営んできた。
 2006年改革で、法人税法の施行令が改正され、公益目的事業は税法上の収益事業から除外され非課税となった。当然、外形的に収益事業に該当するもの、営利競合するものを公益目的事業から除外する規定は認定法のどこを探しても見当たらない。そんな規定を置いたら、上記の施行令改正と矛盾してしまうから当たり前である。「公益目的事業として認定すると非課税になるから、法人税法上の収益事業に該当するものは除外するのが原則」という考え方は、認定法の「条文」よりも法人税法の古い「原則」を暗黙のうちに優位におき、その原則の明示的な〈例外〉規定である当の法人税法施行令5条2項1号の“公益目的事業に該当するものは収益事業から除外する”という条文を“収益事業に該当するものは公益目的事業から除外する”と空目して読み間違えているのではないか。

 

執筆者Profile
星 さとる(ほし・さとる 全国公益法人協会客員研究員)

東京大学を卒業後、公務員を経てMBA取得。法人法と認定法がクロスする実務についても理論に基づき実践的に助言するコンサルタントとして相談・顧問を引き受けている。公益目的事業の一本化(「公益目的事業の論理構造と事業のまとめ方」(『月刊公益法人』2009年1月号))など採用された政策提言も多数。認定当局との専門的な協議を得意とする。主な資格として、上級個人情報保護士、企業危機管理士等。

 

月刊公益オンラインとは

財団法人・社団法人に特化した支援プログラム"シェアコモン200"の利用法人様向け実務専門誌『月刊公益』の記事を中心に、公益・一般法人に関するニュースや専門家による解説などをお届けする情報配信プラットフォームです。

詳しくはこちら
専門誌

無料登録のご案内

「月刊公益オンライン」に無料登録すると、登録の方限定の記事をご覧いただけるなど、実務に役立つさまざまな特典をご用意しております。

特典1

限定記事や
実務カレンダーが読めます!

「月刊公益オンライン」の無料登録の方限定記事や各月の事務局の作業内容がつかめる「実務カレンダー」をご覧いただけます。

特典2

最新の法改正に関する
セミナーなどの情報を受け取れます!

公益認定法改正など、最新の法改正とその対応に関するセミナーをはじめ、公益・一般法人の運営に必要な知識を深めることができる講習会の情報をお受け取りいただけます。

特典3

よくあるご相談内容をピックアップして
メールにてお届けいたします!

よくあるご相談内容に弁護士や税理士などの専門家が回答するQ&A集を、メールにてお受け取りいただけます。日々の業務のお困りごとや疑問解決にお役立てください。

特典4

公益法人・一般法人に特化した専門書籍を
10%オフで購入できます!

月刊公益オンラインを運営する公益法人協会では、社団・財団法人のための出版物を多数発行しております。無料登録いただいた方は、通常価格から10%割引でご購入いただけます。