代表理事の交代手続は変更登記だけで大丈夫?

 

鷲澤克栄
(わしざわ・かつえ 全国公益法人協会 相談室職員/公認会計士)

 

質問

代表理事の交代手続は変更登記だけで大丈夫?

 当法人では、定時評議員会で理事の改選を行い、その後の理事会で新たな代表理事を選定しました。変更登記は司法書士に依頼する予定ですが、代表理事が交代するのは久しぶりであり、登記以外にどのような手続を確認すべきか十分に整理できていません。代表理事が変更された場合、実務上はどのような点に注意すればよいのでしょうか。

 

回答

登記は手続の一部!選定・届出・名義変更まで漏れなく確認を

 代表理事が変更された場合、変更登記は重要な手続ですが、それだけで一連の実務が完了するわけではありません。まず、代表理事の選定手続が定款や理事会運営ルールに沿っているかを確認し、その内容を議事録に適切に残す必要があります。その上で、変更登記、法人実印・印鑑カードの取扱い、行政庁への届出、金融機関や契約先への連絡、各種システムの権限変更などを順に確認することが重要です。特に、登記事項に変更が生じた場合は、原則として変更が生じた日から2週間以内に変更登記を申請する必要があります。また公益法人の場合は、登記とは別に行政庁への変更届出や公益法人インフォメーション上の手続が必要となる点にも留意しましょう。

※ 本稿は公益法人を前提とするが、公益認定以外の各種手続は一般法人にも共通する。財団の「定時評議員会」は社団の「定時社員総会」と読み替えられたい。

 

鷲澤さんの解説

代表理事の選定手続と議事録を確認する

 代表理事が交代する場合、最初に確認すべきなのは「誰が・どの機関で・どのような手続により選定するか」です。理事会設置法人では通常、理事会において代表理事を選定します。ただし、定款に特別な定めがある場合はその定めに従う必要があります。
 議事録には、選定した旨、選定された者の氏名、就任承諾の有無、決議結果などを明確に記載します。後日、登記や金融機関での手続、行政庁への説明等に用いる根拠資料となるため、もれなく整えておくことが大切です。

 

変更登記は「2週間以内」を意識する

 登記事項に変更が生じた場合、主たる事務所の所在地では、原則として変更が生じた日から2週間以内に変更登記を申請する必要があります。ここでいう「変更が生じた日」は、選定日、就任承諾日、前任者の退任日など事案によって異なります。司法書士へ依頼する場合であっても、法人側で各日付(選任日・就任承諾日・退任日・任期満了日など)を正確に整理しておきましょう。

 

法人実印・印鑑カード・電子証明書も確認

 新しい代表理事が法人実印を届け出る場合は法務局への印鑑届出を行います。また、前任者が管理していた印鑑カードや法人実印の保管場所、使用権限の引継ぎも明確にしておくべきです。
 近年は、電子申請や電子契約、インターネットバンキング等で、電子証明書や管理者アカウントが代表者情報と結びついているケースが増えています。前任者の権限が残ったままになっていると内部統制や情報管理上のリスクとなるため、速やかな切り替えが必要です。

 

公益法人では行政庁への届出も確認

 公益法人の場合、代表理事の変更は行政庁への変更届出事項に該当します。公益法人インフォメーションを通じた届出や、添付書類の提出が必要となる場合があります。

代表理事変更時に押さえておきたい4つの視点

①代表理事の選定手続が、定款や理事会運営規程に沿って行われているか
②変更登記を、原則として変更後2週間以内に申請できるよう準備しているか
③公益法人の場合、行政庁への変更届出や公益法人インフォメーション上の手続を確認しているか
④金融機関、契約先、各種システム、ホームページ、内部決裁権限の変更漏れがないか

 一般法人では公益認定関係の届出は生じませんが、公益法人では変更登記とは別に行政庁対応が必要です。公益法人インフォメーションや所管行政庁の案内を必ず確認しておきましょう。

 

金融機関・契約先・内部権限の変更漏れに注意

 見落とされやすいのが金融機関や取引先への届出です。法人名義の預金口座は代表者変更届が必要となり、登記事項証明書、印鑑証明書、理事会議事録、本人確認書類などが求められます。
 また、賃貸借契約、業務委託契約、助成金関係、各種システム(会計・給与ソフト、Webサイト、メール署名、名刺等)の記載や権限変更も漏れなく行う必要があります。内部管理の面では、契約締結や決裁権限など、前代表理事が関与していた業務を事前洗い出ししておくことが重要です。

 

おつかれさまです、相談室です。
 役員改選後は、理事や監事の任期や重任登記、新任役員の就任手続などに意識が向きやすい一方で、代表理事が交代した後の実務は見落とされがちです。
 代表理事の変更は、登記にとどまらず、行政庁への届出、金融機関・契約先への対応、内部決裁権限の変更など多岐にわたります。役員改選を終えたこの時期に、自法人の代表者情報や内部権限が最新の状態になっているか、改めて確認しておきましょう。

 

執筆者Profile
鷲澤克栄(わしざわ・かつえ 全国公益法人協会 相談室職員/公認会計士)

国税専門官としての実地調査、監査法人での財務諸表監査、地方自治体の包括外部監査に従事した経験を活かし、相談室の事務局業務及び相談対応を担当。日本公認会計士協会では、非営利法人委員会公益法人専門部会専門委員、公会計委員会公会計制度専門部会専門委員等を歴任。

 

 

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