使途制約がある寄付資産の元本維持とその会計処理―概念と論点の整理―

藤井 秀樹
(ふじい・ひでき 京都大学名誉教授)
 寄付取引に関する複数の解釈
 「元本を維持した上でその運用益を事業に充てることを指定された取得原価1,000の債券を、寄付者から受け入れた」。公益法人では(あるいは一般法人でも)、よくある寄付取引であろう。この取引は一見すると、極めて単純なもののように思える。ところが、この取引の会計処理には幾つかの解釈が存在し、それが制度理解に混乱をもたらしている。小論では、上記の設例によりながら当該会計処理に係る概念と論点の整理を行い、混乱解消の一助としたい。 「元本」の「維持」とは何か
 問題は、「元本を維持した上で」という場合の「元本」と「維持」が何を意味するかに絡んで発生する。すなわち、そこでいう「元本」の「維持」は、①貸方の「指定正味財産」の「維持」をいうのか、②借方の「
                           

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