認知症になった理事への対応と留意点
2019年04月19日

渋谷幸夫
(しぶや・ゆきお 全国公益法人協会特別顧問)
(しぶや・ゆきお 全国公益法人協会特別顧問)
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目 次
厚生労働省によれば、認知症を患う人の数が令和7(2025)年には700万人を超え、65歳以上の5人に1人が認知症に罹患するとのことである。もし、自法人の理事が認知症と疑われた場合、どのように対応すればよいのだろうか。
Ⅰ 認知症・高齢者
認知症とは、記憶などの認知機能(見る、聞く、触れるなどして感じたこと、思い出したり、思いついたりしたこと、その中で大事なこと、目新しいことを見いだして判断し、周りに働きかけ、その反応に適切・柔軟に対応するなどの能力。)(注1)が多方面にわたり障害されるために、日常生活や社会生活に支障をきたす状態とされ、アルツハイマー病や脳血管性認知症など、さまざまな原因によるものが知られている(注2)。総務省統計によると、平成29(2017)年10月1日時点における65歳以上の高齢者人口は、推計3,514万人と過去最高を記録し、総人口に占める高齢者人口の割合は27.7%と、わが国は世界に類をみないほどの超高齢化社会となっている。
ところで、日本における認知症の方の数は、令和7(2025)年には700万人に達すると推定され、診療、介護、社会的支援、予防と、認知症に関わる問題について、幅広い取組みが求められている。公益法人、一般社団・財団法人(以下「公益法人等」という。)の理事の中には、高年齢者がかなり多く含まれているところもある。したがって、このような法人においては、今後理事としての任期中に認知症になる者も出て来る可能性も否定できない。
Ⅱ 認知症理事の把握
認知症になった理事がいる場合、これをどのような方法で把握するかという問題がある。理事会は、年数回しか開催されないので、その場で認知症であることを察知できるようなことは、一般的には考えられない。理事会に出席されていても、何も発言などをされないと分からない。認知症になった人でも、日常生活で一緒に暮らしている家族でないと、その症状の変化は分からないことが多い。
万一、理事会での審議の中で、ある理事の言動がおかしいと察知されたようなときには、家族の方に普段の家庭生活の中での言動を、報告してもらうことが考えられる。
認知症になったからといっても、初期の程度の軽い理事については、その適格性につき特に問題となることはない。理事の任期は、原則2年(法66条本文・177条)であるので、場合によっては、理事として不適格者の判断をすることもなく、任期が満了してしまう場合もあり得る。
ある理事につき、認知症になったという情報が法人に報告された場合には、法人は、当該理事、家族等から認知症の程度につき報告を受けること(場合によっては、その程度を把握するため、専門医の診断書の提出)が必要になると考えられる。
Ⅲ 認知症と理事の退任
1 任期満了と不再任
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