Vol. 10│公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律施行規則の改正について

内閣府公益認定等委員会 事務局だよりPLUS+

本稿の目的

 令和 5 年12月 4 日に、公益社団法人及び公益財団法人 の認定等に関する法律施行規則(平成19年内閣府令第68 号。以下「認定法施行規則」という。)の一部を改正す る内閣府令が公布・施行されました。本稿では、このうち認定法施行規則第48条の改正について、その内容・趣 旨について御説明することを目的としています。

公益目的取得財産残額の算定  

 公益法人は、認定を取り消された場合には、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(平成18年 法律第49号。以下「認定法」という。)第30条第 2 項に規定する公益目的取得財産残額に相当する額の財産を他の公益法人等に贈与しなければなりません(認定法第 5 条第17号及び第30条)。その目的は、公益目的のために 取得された財産が引き続き公益目的で使用されることを担保することにあります。  

 公益目的取得財産残額については、実際に公益認定の取消し等が行われた時点で過去に遡って正確に算定することが、実務上困難であると考えられることから、毎事業年度、公益目的取得財産残額に準ずる額を算定することとされています(認定法第30条、認定法施行規則第48条)。

 この公益目的取得財産残額に準ずる額を算定するに当たっては、当該事業年度末日における公益目的増減差額 (認定法施行規則第48条第 3 項)を用いますが、元々公益目的事業財産を多く保有していない法人で、かつ、正味財産増減計算書内訳表の公益目的事業会計がいわゆる赤字であっても、公益目的事業費を計上している法人においては、実態としては法人会計等から公益目的事業の赤字を補填しているケースが多いと考えられます。その場合の会計処理として、法人会計等から公益目的事業会計へ財産の振替をせずに直接費消している場合と、法人会計等から公益目的事業会計へ財産の振替(他会計振替)をした上で公益目的事業費に費消している場合があります。後者の場合は、公益目的事業財産の増減が見合っているので公益目的増減差額は減少しませんが、前者の場合は、公益目的事業財産が増加せずに公益目的事業費の支出がなされるので公益目的増減差額は減少することになります。

公益目的増減差額と認定法施行規則改正の趣旨  

 上記のように公益目的増減差額がマイナスになると、 当該マイナス分はその事業年度以降もカウントされるため(認定法施行規則第48条第 3 項柱書)、前述の理由により公益目的増減差額のマイナスが継続している法人では、このマイナス幅が年々拡大し、当該マイナス幅が公益目的保有財産の額を上回る場合には、公益目的取得財産残額も計算上マイナスになります。例えば、公益目的取得財産残額のマイナスを恣意的に蓄積させた上で、公益目的事業に対する寄附を受けた後、認定取消しを申請することで、当該寄附のうち、公益目的取得財産残額の マイナスに相当する額の財産を一般法人となる法人が自由に使用・処分できることになります。このような、公益法人の主たる目的である公益目的事業の実施に当たり、恒常的・恣意的に法人会計等から公益目的事業費を支出することで、公益目的取得増減差額の赤字を増加させることによる不公正は防止する必要があることから、 公益目的増減差額はゼロ以上となることを明確化する改正を行うことといたしました。

 なお、実際に公益認定の取消し等があり、公益目的取得財産残額が実態以上に増額又は減額されていることが 判明した場合には、認定法施行規則第50条に従って適正な額に調整することとなります。

制度改正における検討について  

 公益目的取得財産残額の把握については、今後の制度改革において、実際に使用する機会が限られ、難解で作成に手間がかかる別表Hを用いた公益目的取得財産残額の算定に替えて、①公益目的事業財産や公益目的取得財産残額の概念・定義を再整理、②公益目的事業会計の区分経理を徹底、③取消し時点の財務諸表等から公益目的取得財産残額を算定できるよう、明確化・簡素化する方向で検討を進めています。  

 内閣府では引き続き公益法人制度の適切な運用及び公益法人の皆様への御説明に努めてまいります。御不明点等ございましたら、行政庁までお問合せいただきますようよろしくお願いいたします。

 


文責●内閣府大臣官房公益法人行政担当室

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